1院だけで10年前の市の出生数に肉薄
「ひとつは補助金です。10年間は運営することを約束するから、運営費用の一部を公費で補助してほしいと提案し、市議会が条例案を可決しました。ふるさと納税を財源に毎年1億5000万円の補助金を受給しています。それから、医療者を確保できたのが大きかった。閉鎖する市立病院産婦人科の勤務医が、私たちのクリニックで働いてくれることになったのです」(杉本代表)
2024年4月に開院したファミール産院ありだは、ベッド数12床。2025年はここで188人の赤ちゃんが生まれた。有田市の出生数と比較すると、ここ1院だけで2024年の約2倍となり、2014~15年の水準に近い。
「私たちの開業がここまで明白な結果を出すとは予想外でした。女性が安心して出産できる場所があって、安心して産むという経験をすると、『また産みたい』という動機を喚起します。その結果、出生数の向上にもつながる可能性を、有田で実感しました」
経営に不安がある医師でも問題なし
ファミール産院は、千葉県を中心に経営する11施設を共通の事務システムで運営している。有田市での事例からは、このバックヤード機能が人口減少地域での産婦人科クリニックの経営に役立っていることがわかる。
採用や退職対応、給与管理、出退勤管理などの人事業務から、光熱費をはじめとする運営経費などにいたるまで、共通の業務フォーマットを使い、ひとつひとつの業務の「見える化」「効率化」を行っているのだ。
ファミール産院ありだには、前述のように市立病院の産婦人科医がスライドする形で着任したのだが、このとき、産婦人科医は「病院経営は専門外だ」と経営に責任を持つことに不安を見せた。その点、人事、経理など、医療業務以外の運営業務を本部が管理・指導するファミール産院の手法が、医師のニーズと合致した。
経営経験のない市立病院の勤務医が、事務や経理には関与せず、医療業務に注力することができる仕組みということだ。


