過去の高血糖のツケが合併症になって現れる
糖尿病専門医である私のポリシーは、以前からずっと変わることなく「患者さんを絶対に透析にさせない」というものです。
血糖値が高いこと自体では、患者さんは苦しみません。それに、今はよい薬があり、糖尿病の治療はさほど難しいものではありません。しかし、網膜症や腎臓病などの合併症は油断大敵で、私は、患者さんの合併症の予兆にとても神経を使っています。
というのも、どんなに現在は血糖値をコントロールしていても、「過去の高血糖のツケ」(高血糖メモリー、メタボの烙印などと呼びます)が、10年後、20年後に合併症となって現れるケースが多々あるからです。
以前、アメリカで20年近くにわたって行なわれた研究でも、そのことが明確にわかっています。血糖値のコントロールが悪い糖尿病の患者さんは、20年後には半分以上が合併症の網膜症を、4分の3が腎臓病を発症しました。
一方、血糖値コントロールがうまくできていた患者さんでも、20年後には13パーセントが網膜症を、53パーセントが腎臓病を発症しています。この数字を見ても、いかに腎臓が危ないかがわかるでしょう。
“高血圧”は想像よりはるかに危険
日本には、現在、4300万人の高血圧患者がいると考えられています。
ただし、このうち、約3分の1は自覚していないため放置されています。1割は自覚していても治療を受けておらず、3割は治療しているもののコントロール不良です。
要するに、ゆうに3000万人を超える人たちが、血圧が高い状態を放置したままで過ごしていることになります。
高血圧は、あまりにもありふれた疾患です。そして、よほど高くならない限り、めまいや頭痛などの症状が出ません。
きっと、あなたの周囲にも「血圧なんて気にすることないよ」と言う人がいることでしょう。しかし、高血圧は、こと腎臓を守るうえでは、想像しているよりもはるかに危険な疾患なのです。
広く知られているように、高血圧だと動脈硬化が進みます。動脈硬化は腎臓の血管でも起きます。
しかも、腎臓の血管は細いので、動脈硬化の影響を強く受けて腎機能がどんどん落ちてしまうのです。だから、腎臓を守るには、血圧が高くならないようにコントロールすることが必須です。
一方で、腎臓の機能が落ちると、水分や塩分の排出調整がうまくいかなくなり、血圧が上がっていきます。これを「腎性高血圧」といいます。
このように、高血圧と腎臓病は切っても切れない関係にあります。
もともと血圧が高い「本態性高血圧」の患者さんは腎臓を悪くしやすく、また、腎臓病が進んでステージG3以上になると、最初は血圧が低かった患者さんでも高血圧になっていきます。
つまり、高血圧は腎臓を悪くし、腎臓を悪くすると高血圧になるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

