新たな「フリーライド」問題に直面

もう一つの大きな問題は、受信料を払っていない人でも、ネットサービスを利用できてしまう「フリーライド(ただ乗り)」だ。

「公共放送」を標榜してきたNHKは、だれでも視聴できることが前提で、そのうえで受信契約を義務づけ、受信料を徴収してきた。したがって、受信料の支払いの有無にかかわらず、番組を見ることができるという不公平な事態がずっと続いてきた。

2026年3月末で徴収率は77%なので、5人に1人以上は、受信料を払わずにNHKの番組を享受しているのだ。

こうした中、ネット事業が必須業務となり、「公共メディア」を名実ともに自認することになったNHKは、新たな「フリーライド」問題に直面することになった。

スマホやパソコンでNHKの番組を見ようとすれば、受信契約の確認が求められる。つまり、事実上、定額課金のサブスクリプション(サブスク)サービスとなってしまったのである。ユーザーからすれば、受信料を払った人しか見られないスクランブル配信と映る。

ネットサービスが任意業務の時代は、従来の「NHK NEWS WEB」のニュースや情報は、受信料を払っていなくても誰でも見ることができたが、「NHK ONE」のスタート後は、受信契約を確認できないと実質的に見られなくなってしまった。

「NHK ONEは、どなたでもご利用できるサービス」とNHKは強調するが、受信料を払わなければ視聴できないのだから、矛盾は明らかだ。だれにでもサービスを提供しなければならない「公共メディア」としては、明らかにサービス後退で、不公平と言える。

【図表1】NHK ONEとNHK オンデマンド
出所=NHKプレスリリースより

新アプリで利用者が668万人から半減

「NHK ONE」を利用する場合、受信料を払ってさえいれば、基本的に視聴できる。払っていなければ、テレビを持っている場合は新たに受信契約をするか、テレビを持たずにパソコンやスマートフォンで見ようとする場合は地上放送と同額のネット専用の「ネット受信料」を払わなくてはならない。

NHKが全局を挙げてPRする「NHK ONE」だが、NHKによると、2026年3月末時点で「契約確認済みアカウント数」は362万件。このうち、「旧NHKプラス」からの移行組は349万件、新規は13万件。新規アカウント獲得組の中で、「ネット受信料」の契約者数は2026年2月までの5カ月間で約6000件という。

「旧NHKプラス」がサービスを終了した2025年9月末で668万件だったことと比べると、NHKのネットサービスの利用者は、半年経って、増えるどころか、半数程度に激減してしまっている。

この数字は、何を意味するのか。

NHKのネットサービスが、ユーザーにとって魅力に乏しいことを雄弁に物語っているといえよう。

「ネット受信料で大幅増収」は夢のまた夢

総務省も、NHKも、「ネット受信料」の創設や必須業務化を、生煮えのままスタートさせてしまった感はやはり否めない。

「NHK ONE」に関わる論点は、NHKの存立基盤である受信料制度そのものが、ネット時代に合っているのかという根源的な問題である。