つまり、「NHK ONE」は、「豊臣兄弟!」などのドラマや「ブラタモリ」などのバラエティー、「忍たま乱太郎」などのアニメよりも、「ニュース」を後方に追いやっている実態が浮き彫りになってくる。
NHKの報道ネットワークは、全国津々浦々にニュース拠点を張りめぐらし、世界各地に特派員が展開して、国内外の「今」を伝えている。報道は、民放各局では追随できない、NHKが誇る看板でもある。その報道番組を「NHK ONE」のメインコンテンツに据えないで、どうするのか。
日本特有のNHKと民放が併存する「放送の公民二元体制」の中で、筆者はかねて、「民放ができることは民放に任せて、NHKでなければできないことに注力すべき」と主張してきた。ドラマやバラエティーは民放に委ね、商業ベースに乗りにくい報道や教育にもっとシフトすべきだろう。
受信料を払っても見られない「NHKオンデマンド」
NHKは、ネットサービスを「NHK ONE」に統合したというが、実は、有料(月額990円)の「NHKオンデマンド」には手をつけなかったため、ネット事業の全体像は2本立てなのである。
「NHK ONE」で過去の番組を視聴できる「見逃し配信」は過去1週間分だけ。それより以前の番組を見たければ、受信料とは別にお金を払って「NHKオンデマンド」を利用しなければならない。
ネット事業が任意業務だった以前のNHKなら説明もついただろう。だが、必須業務になった今、受信料で制作された番組を視聴するために、受信料のほかに利用料を徴収される状況に違和感を覚える人は少なくないに違いない。
「NHK ONE」のそれぞれのカテゴリーをクリックすると、多くの番組タイトルがズラリと並ぶが、大半は放送予定の番組と、はるか以前に配信を終えた番組ばかり。「同時配信」とも「見逃し配信」とも縁のないラインナップなのだ。それはまるで、「NHK ONE」から「NHKオンデマンド」に誘引するために掲示しているかのように見える。
2つのサービスの併存は、ネット事業の必須業務化の意義が中途半端に整理されていることの証左と言える。
「NHK ONE」は、ユーザーの期待を裏切っているといっていい。
ストレスが溜まる「フタかぶせ」
ユーザーにとってストレスが溜まる問題は、さらにある。
放送では視聴できるのに、権利関係から配信では見られない番組やシーンが少なくない。いわゆる「フタかぶせ」だ。
定時のニュースでさえ「この映像は配信されておりません」と表示が出て、音声も映像もまったく出ない時間帯が続くことがしばしば。
「フタかぶせ」は、スポーツ番組に多く、以前は目玉の高校野球も配信されなかった。2026年のセンバツはようやく配信されたが、夏の全国選手権はなお調整中という。
「ネット受信料」は、地上放送と同額の1100円に設定されているが、同じ番組を見られないとあっては、不公平のそしりを免れない。サービスのレベルが低ければ、料金を低く設定するのは常識ではなかろうか。

