1日1080杯の絶品ラーメンを売る焼肉店
広島県尾道市に、1日最大1080杯のラーメンを販売する焼肉店がある。店の名は「牛ちゃん」、JR尾道駅から徒歩約10分の場所にあり、週末は名物・尾道ラーメンを求める客で長い行列ができる。地元はもちろん、東京、大阪、九州、さらには韓国・中国など海外からもはるばる押し寄せるという。
尾道ラーメンとは、一般的に「鶏ガラ・小魚ベースの濃口醤油スープ」に「豚の背脂ミンチ」を浮かせた、コク深い醤油ラーメンを指す。ライバル店が多い中、「牛ちゃん」の売りは、「巨大なチャーシュー」と「ひときわ大粒の背脂」だ。「こってり濃厚」に見えるが、後味が意外なほどあっさりしている、と女性客にも大好評だ。
このラーメンを打ち出したのは、同店オーナーの仁田雅也さん(45)。
牛ちゃんから50メートルほど離れた場所にある「吾一」も仁田さんが2024年8月にオープンし、牛ちゃんと同じラーメンを提供する。こちらも同じく行列だ。
1店舗で、1日最大1080杯。さらにお土産用のラーメンセットも発売以来好評で、地元スーパーや道の駅など3県20店舗以上で販売し、月3万食の売上実績を持つ。年商は2店舗合わせて約1億8000万円。今や押しも押されもせぬ、広島を代表する人気店の座を勝ち取った。
だが、最初から繁盛店だったわけではない。
もともとは地元客向けの夜営業の焼肉店で、一時は売上が低迷し赤字に。いつ潰れてもおかしくない経営状態だった。どうやって赤字焼肉店を異業種であるラーメン店へと変貌させ、成功に導いたのだろうか。
赤字店を立て直すために店長に
「牛ちゃん尾道店」が焼肉店としてオープンしたのは1997年のこと。仁田さんは高1のとき、同店でアルバイトを始めた。野球の推薦で入学した高校をすぐに退部し、父親と衝突したのをきっかけに1カ月間家出。ある日、知人から「近くにできた焼肉屋でバイト募集しとるよ」と声をかけられた。
高校3年間店でバイトし、卒業後は建設業など別の仕事に就いたものの、23歳で再び社員として牛ちゃんへ戻る。職場は尾道店ではなく、初代オーナーが経営する系列店舗で4年間修行した。
ところが、以前バイトしていた牛ちゃん尾道店は、来客数が年々少なくなり、売り上げは下降線をたどっていた。
「2006年当時の年商はわずか約3000万円でした。オープン当初は年商約1億2000万円の売上だったそうですが、9年で4分の1近くまで落ち込んでしまって。いつ潰れてもおかしくない状態のようでした」(仁田さん)
尾道を訪れる観光客は多いが、彼らは、昼に散策やサイクリングなどで観光した後、夕方には瀬戸内海のしまなみ海道に流れてしまうのだそうだ。
閑古鳥の鳴く店内で客をただ待つだけ。それにもかかわらず、客が来ないからと営業時間が24時までのところ21時で閉めるなどし、夜の客すら取りこぼすような商売をしていた。当時の店長も、売り上げを立て直すための施策を全く打つことができなかった。
「赤字店舗を立て直してくれんか」
先代オーナーは、いわば弟子である元バイトの仁田さんに店長を打診した。系列店で働いていた仁田さんは当時27歳だった。




