「僕には牛ちゃんしか残ってなかった」

師匠の願いを、二つ返事で引き受けた。ただ、その頃、仁田さんは「人生のどん底」にいた。

20歳で結婚し、2人の子どもに恵まれたが、生活は困窮。手取りは20万円以下。それも家賃、食費、光熱水費などで瞬く間に消えてしまい、高校時代にバイト代でコツコツ貯めてあったのも含め330万円近くあった通帳の残額も底を尽きた。妻との関係も破綻し、ほどなく離婚。子どもを引き取り、実家に戻って父子家庭として暮らし始めていた。

父親からは「子どものことは全部お前がやれ」と言われ、保育園の送迎をこなしながら働いた。「毎日を回すだけで精一杯。あの頃の記憶、ほとんどないです」