「自分たちは小売業ではなく、製造業」

【藤吉】それは何が起こったんですか?

【阿部】ひとつには低価格・多店舗展開路線が市場のトレンドからちょっとずれはじめて、商品の在庫がかなり積み上がってしまったんですね。それで出店ペースが鈍ると、さらに在庫が増えるという悪循環に入ってしまった。

けれどもスパークスは、そこでさらに株を買い増したんです。

【藤吉】阿部さんには、ユニクロ復活の道筋が見えていたんですか?

【阿部】というより、柳井さん自身がユニクロの未来をしっかり見通していたことが大きい。価格破壊路線では長続きしないというのは早い段階で見切っていました。そのうえで柳井さんは「自分たちは小売業ではなく、製造業」ととらえていた点が画期的だったと思います。だから単に安いというだけでなく、良質なものをつくり続けることが消費者の心をつかみ、結果的にブランドの価値を上げていくという信念があったんだと思う。

実際に90年代の後半に機能性に優れたフリースが大ヒットしますよね。さらに海外の有名デザイナーとコラボした商品を出したり、ユニクロは世界的なブランドへと成長していくことになります。

柳井氏が唯一認めた投資会社

【阿部】柳井さんは僕らが株を買ったときのことを覚えていてくれて「日本で投資会社として自分が認めるのはスパークスだけだ」と言ってくれました。そんなこともあって、柳井さんにウチのアドバイザリーボードをお願いしていたこともあります。ご本人が「この機会に投資の世界について勉強したい」とおっしゃっていたのが印象的です。

【藤吉】そのころに、柳井さんから「社長の阿部さんが途方もない野望をもって、それをいかに全社員に伝えるか、それを聞いたみんなが具体的にどう実行するかが大事だ」とハッパをかけられたということを阿部さんが以前、社内報に書かれていました。

【阿部】確かにそういうことを言われたかもしれません。普段はどちらかというと寡黙な人で、会って食事をしていてもほとんどしゃべらない。でも、企業というものは成長し続けなきゃいけないという強い信念があるんですよね。そのためには変化する環境に対して、常に経営者も企業も自らを変革し続けなきゃいけない、と。