ブラック企業にもしがみつくしかない

何とか正社員として就職したあかつきには、今度は辞めることなど簡単にはできない。どれだけ「ブラック」だとしても、しがみつくしかない。理不尽な要求、人格否定の罵声、終電間際までの残業地獄。そもそも残業代も支払われない。こんな環境でも「耐える」のが当たり前だった。

会社を辞めることは、あたかも反社会的行為のように罵倒されることも珍しくはなく、辞めた若者への社会の目線も厳しいものだった。筆者自身の体験でも、大学院に進学することについて「就職しない人間はおかしい」と周囲から見られ、だいぶ肩身の狭い思いをさせられた記憶がある。

いずれにせよ、多くの人にとって正社員になること、正社員であり続けること、なるべくなら大企業で名の通った会社の社員であることは、「損得」を超越した、いわば自我の防衛ラインだったのである。