退職代行を使った「本当の理由」

実際に、各種の報道を見ていると、ふつうの企業にまで活用されるようになっており、経営に深刻な影響を与えている可能性も否定できない。例として、いくつか紹介しよう。東海テレビは、ヘルスケア商品などを手掛ける従業員120人ほどの企業の事例を紹介している。

2025年1月に初めて「退職代行」の電話を受けた。(同社長は)ちょっとびっくりしてしまって、「退職代行とうとううちも来たよ」と、その日のうちにバァーっと会社の中で広まりましたね。「まさか」って思いましたね、自分たちの会社には縁のないことだと思っていたので。(代行の電話を受ける前は)“なんでそれぐらいのこと電話1本で”とか、“一言会って言うことができないのか”と。勤続1年未満の20代社員の“代行”だという退職連絡に、初めはただただ驚いたという。

電話を持つビジネスマンの手
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しかし、「本来やりたい仕事ではなかった」という理由を伝えられ、反省も口にした。(同社長は)身をもって経験すると、ちょっと反省をしたというか、少し休みがちになっていた時に「なんで自分が声をかけてあげられなかったんだ」と思いましたし、会社側にも問題がやっぱりあったんじゃないかと。(常識を)変えないと、このままでは若い人が採用できないなと。この1件以来、“何でも言える空気づくり”を目指し、社員の声に耳を傾ける時間を積極的に増やしているという。

これまでの「常識」を変える必要

社員の退職をきっかけに職場環境が改善するのであれば、もちろん望ましいことだ。

ただしここで注目したいのは、「本来やりたい仕事ではなかった」という理由ひとつを伝えることがわずらわしく、退職代行が使われている点である。

会社を辞めることは、以前とは比べものにならないほどカジュアルになり、人生にとっても大きな出来事ではなくなっている。それは同時に、会社側にとってはこれまでの企業文化を変えていかなければならない、という危機感を覚えるほどの出来事である。社長の「身をもって経験すると……」という発言にすべてが表れているように感じる。