「禁止」より「数値規制」を選んだ日本
一方、日本の現状はどうでしょうか。日本でも動物愛護への関心は年々高まりを見せており、法整備も進んでいます。特に重要なのが、2019年に改正され、順次施行された動物愛護管理法の改正と、それに伴う省令の「数値規制」です。
2021年6月から段階的に施行された環境省令(飼養管理基準の具体化)により、ブリーダーやペットショップに対して、ケージのサイズ、従業員一人当たりの飼育頭数、繁殖制限、運動機会の確保などの具体的な数値基準が設けられました。
これまで「適切に管理すること」といった曖昧な表現だった部分に明確な数値が導入されたことは、日本の動物福祉において間違いなく大きな前進です。
しかしながら、制度は作っただけでは機能せず、監視や指導が必要ですが、自治体の担当職員数は限られているため、登録件数に対して立ち入り検査の頻度が十分でない地域もあります。
そして、繁殖回数や頭数管理を帳簿や自己申告に依存せざるを得ない面があり、虚偽記載や記録不備があっても発見しづらいという問題があります。チェックが行き届かなければ悪徳業者の是正にはつながりません。
ペットビジネスは合法のまま続いている
また、環境省は省令そのものに加えて「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」という文書をだしています。
そこに「やむを得ない場合」などの文言が入ることで、自治体担当者の裁量が広くなり、同じような飼育環境でも「問題なし」「要改善」「許可取り消し相当」と判断が分かれます。このため「悪徳業者をどこまで排除できるか」は地域差が大きく、一掃には至っていないのが実情です。
そして、冷静に立ち止まって考える必要があります。前述した日本のアプローチは、欧米の「販売禁止」とは決定的に異なるという点です。欧米がシステムそのものを否定(=禁止)したのに対し、日本はシステムを維持したまま環境を良くしよう(=管理)としているのです。数値規制をクリアしてさえいれば、大量生産・大量流通、生体の展示販売など、日本のペットビジネスの構造自体は合法のまま続きます。
数値規制により「ケージが数センチ広くなった」「従業員が増えた」ことは動物にとって良いことですが、それは「ショーケースに並べられる」というストレスや、「売れ残った動物はどうなるのか」という在庫リスクの問題を根本的に解決するものではありません。まして、衝動買いを回避できるものではないのです。

