「顔が赤いと人に嫌われてしまう」への提案

精神科医の森田正馬さんが創始した、「森田療法」という心の治療法があります。森田療法の最大の特色は、不安をもつ人から不安を取り除こうとするのではなく、不安を抱えたままどう生きるかを考えようとすることです。

和田秀樹『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(PHP文庫)
和田秀樹『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(PHP文庫)

症状不問といって、症状のことはあれこれ聞かないのですが、これは症状を治すより大切なことに目を向けさせるための技法です。

たとえば、顔が赤いことが悩みで、それを治したいと思っている人がいるとします。森田療法ではそこで、なぜ治したいのかを尋ねます。

「顔が赤いと、人に嫌われてしまうから」という答えだとしたら、その人が本質的に求めているのは、「赤い顔を治すこと」ではなく「人から好かれること」です。

そこで、こう提案します。

「顔が赤くても人に好かれている人はいます。顔が赤くないのに人に嫌われている人はもっとたくさんいます。顔が赤いのを治したところで、人に好かれる努力をしないかぎり、好かれるようにはなりません。私はあなたの顔が赤いのを治すことはできないけれど、あなたがどうやったら人に好かれるかを、一緒に考えることはできます」

病気を抱えながら幸せに生きる

そして、たとえば話術を磨くとか、笑顔を絶やさない、あるいは、「尊敬する人の前だと顔が赤くなってしまうんです。すみません」というふうに、プラスの印象にもっていけるようなエクスキューズを用意するなど、顔が赤いままでも人に好かれる方法を考え、アドバイスします。

つまり、このケースの場合、「顔が赤いこととともに生きる」をめざします。同じように、病気になる不安を完全に取り除くことはできませんが、病気を抱えながら幸せに生きることはできます。そして、どうすればそれが可能かを考えるほうが建設的です。

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