FAの50年は本当に通用するのか
これは日本の製造業にとって、技術以上に組織と意思決定構造の問題である。FA時代の成功体験が深いほど、PA時代への発想転換は心理的に難しくなる。「環境をロボットに合わせる」という50年の常識を、「ロボットが環境に適応する」という発想に組み替える――これは、50年磨いてきた組織のDNAそのものを書き換える作業に等しい。
第1回記事〈「日本はAIで完敗」は大間違い…米国が100兆円投じても手に入らない、ヤマトやトヨタが持つ「最強の逆転カード」〉で論じた「学習し続ける現場」という概念は、ここで決定的な意味を持つ。PA時代において「ロボットが環境に適応する」とは、ロボットが現場で学習し続けるということに他ならない。現場で起きた予測不能な事象を、データとして蓄積し、次の判断に活かす――これは第1回で論じた循環そのものである。
日本企業に問われているのは、2つの転換である。
第1に、設計思想の転換。FA(環境をロボットに合わせる)から、PA(ロボットが環境に適応する)へ。ただしFAで磨いた精度・信頼性を捨てるのではなく、それを「学習し続ける身体」という新しい設計思想に接続し直す。
第2に、組織の転換。「現場を整備する組織」から「現場で学習し続ける組織」へ。ここはまさに第1回で論じた論点である。
この2つの転換ができれば、日本がFAで積み上げた資産は、PA時代における最強の優位に変わる。できなければ、その資産は中国製ヒューマノイドのサプライチェーンに組み込まれる「優れた部品」として消費されるだけになる。
ソフトバンク連合が動き出した理由
ここまで厳しい現実を書いてきたが、日本側にも重要な動きが始まっている。
2026年4月13日、ソフトバンクがNEC、ホンダ、ソニーグループと共同で「日本AI基盤モデル開発」新会社を設立すると報じられた。この4社がそれぞれ株式の10%超を握り、三菱UFJ銀行などメガバンク3社、日本製鉄、神戸製鋼所も少額出資、国内ユニコーン企業のプリファードネットワークスも参画する予定だ。注目すべきは、この新会社が工作機械や産業用ロボットとの連携を前提とし、開発段階からメーカーの声を反映した「フィジカルAIの実用化」を目指す点である。
同月15~17日、東京ビッグサイトでは、日本初のヒューマノイドロボット専門展「ヒューマノイドロボットEXPO」が開催された。少子高齢化による労働力不足の解決策として、ヒューマノイドへの関心が日本でも高まっている証拠である。住友重機械工業、マブチモーター、村田製作所などが参画するKyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)連合も、本格的な活動を始めている。
これらの動きは、希望の兆しである。

