東南アジアから日本へ、競争が過熱
バングラデシュ政府は日本語教育機関の整備、日本人講師の招聘、技術訓練センターの日本規格への格上げ、そして送出機関のさらなる拡充を進めている。ダッカ大学日本語学科のジャハンギール・アラム教授は「適切なスキル開発を行えば、日本の労働需要の相当部分を満たすことができる」と述べている。
バングラデシュという一国だけで、これほどの規模の計画が動いている。
それに加えて、ネパール、ベトナム、インドネシアも同じ市場を競合として狙っている。
バングラデシュから日本へ、という議論が進む一方で、送り出し国の現実について、日本のメディアはほとんど報じていない。
2024年夏、バングラデシュはハシナ首相を学生デモが打倒した政変を経験した。この過程で全国の警察署が一斉に襲撃され、5829丁の銃器と60万発以上の弾薬が略奪され、2週間以上にわたり多くの警察署が無人状態に陥った。過激派を含む受刑者が刑務所から逃走し、闇市場に流れた銃器は今も回収しきれていない。
「優秀な労働者を送り出す国」の別の顔
その影響は犯罪統計に如実に表れている。2025年1月の強盗件数は171件で前年同月(114件)から1.5倍に増加し、誘拐も2025年1月は100件超と、前年同月(51件)と比べて約2倍に増加している。
2023年にはバングラデシュを拠点とする新たな過激派組織2団体が確認されており、テロ脅威の完全な排除には至っていない。
さらに見逃せないのが、欧州での動向である。
バングラデシュ人の欧州流入は、近年急激に増加している。2025年、バングラデシュ人はイタリアへの地中海経由の不法入国者の中で最大の国籍グループとなり、全不法海上入国者の約31パーセントを占めた。
この経路は人道的問題であるとともに、安全保障上の問題でもある。バングラデシュからリビア、イタリアをつなぐ同じ密輸ルートが、武器密売、麻薬密輸、偽造文書の流通など他の形態の国際犯罪にも使用されており、欧州の安全保障システムに潜在的な脆弱性を生み出している。
イギリスでも、2025年の庇護申請者国籍のトップグループにバングラデシュが含まれている。
「優秀な労働者を送り出す国」として描かれるバングラデシュの、もう一つの顔がここにある。
日本が30万人規模で受け入れようとしているのは、こうした国内情勢を抱える国からの人々なのだ。

