「不正するな」と「納期厳守」の板挟みで…

ダブルバインドは、不正な業務につながることもあります。次は、あるメーカーの事例です。

トップが「コンプライアンスを徹底し、決して不正をしてはならない」と命令します。一方、現場では、上司が「納期はどんなことをしてでも厳守して」と厳命します。メンバーは苦しみ、悩み、最終的には自分の責任で不正を行うことを選んでしまうことすらあるのです。

上司も予定通りに出荷できなければ自分の立場が危うくなるので、必死になるのはわかります。反面、メンバーにとっては、矛盾する内容の圧力に毎日さらされている状態と言えます。これでは、冷静な判断力や良心さえも失いかねません。

言行不一致がもたらす莫大な損失

掲げているメッセージと、実際の現場で指示されることにギャップがあるなど、「言っていることと、やっていることが異なる」職場で、人は本気で働くことができるでしょうか。職場における「言行一致」は非常に重要です。

松岡保昌、岩渕美香『残念なリーダーにならないためのマネジメント50の心理法則』(日本実業出版社)
松岡保昌、岩渕美香『残念なリーダーにならないためのマネジメント50の心理法則』(日本実業出版社)

「ダブルバインド・コミュニケーション」は、中間管理職が引き起こしがちです。

社内のルールと上司の指示が異なれば、また、上司の気分しだいで指示が違うなどすると、メンバーはどの指示に従っていいのかわからず混乱します。さらに、どちらに従っても叱られるため、強いストレス状態に陥り、メンタル不調につながることも多くあります。

そして、精神的なストレスだけでなく、しだいに社員の自主性が削がれていくことにもつながります。結果として職場全体のパフォーマンスも低下してしまうのです。

「ダブルバインド・コミュニケーション」を防ぐには、まずは全社でのメッセージの徹底を図ることです。何を優先するのかをトップから中間管理職、現場まできちんと共通認識にする必要があります。

矛盾を現場に押しつけるのではなく、管理職がきちんと調整する。この調整力があるリーダーが信頼されるのです。

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