「評価された」と感じると話せなくなる

では、なぜ評価をしてはいけないのでしょうか。それは、人は評価をされると、続きを話せなくなってしまうためです。

たとえば、相手に「何を、そんな小さなことで……」と思われていることを感じたら、続きを話せるでしょうか。

また、「高い評価であれば構わないのではないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、それもダメなのです。

たとえばわかりやすい例として、4年に一度のスポーツの戦いに出場した選手が、「私、金メダルをとったのです」と話しはじめたとします。その瞬間、聞いている多くの人は「素晴らしいことでないか」と思いますよね。これは高い評価です。

もし、みなさんの言動から「金メダルなんて、そうそうとれるものではない。すごいことなのに、それ以上何を望むというのだろう」というような雰囲気を感じ取ったら、その人は「でも、悔しいのです。自分が納得できる演技ではなかったので、心の底からは喜べないのです」とは言えなくなります。

人は、自分の話を相手がどう受け取っているかを、敏感に察知しながら話をしているのです。「この人は、自分の伝えたいことを正しく理解してくれそうにないな」と思ったら、そこからは相手に合わせて、本当のことは語りません。

無意識にしている評価は、相手に伝わります。だから、評価をしないで話を聴くということが大事なのです。

関係はできているはずなのに、メンバーが本音で話してくれないと感じたら、相手の話を評価しながら聞いていなかったか、振り返ってみてください。話してもムダだと思われないように、傾聴のスキルを実践しましょう。

矛盾した対応が部下を疲弊させる

上司から「わからなかったらすぐ相談して」と言われて実際に相談しに行くと、「そのくらい自分で考えて」と言われてしまう。このような矛盾した対応は、さまざまな問題を引き起こします。

みなさんの会社でも起こっていませんか?

メンタルヘルスを損なうことにもなりかねない、この危険な現象を、心理学用語で「ダブルバインド・コミュニケーション」と言います。

ダブルバインド(Double bind)とは、日本語で「二重拘束」。「2つの矛盾した命令を受け取った者が、その矛盾を指摘することができず、しかも対応しなければならないような状態」のことです。1950年代、英国生まれの米国の文化人類学者グレゴリー・ベイトソンが提唱しました。