創業家がカリスマCEOを引きずり下ろした

過半数の賛成を得て取締役の選任は承認されたのですが、43%という予想外の反対票の多さから、結局、アイズナー氏は自ら会長職を辞任しCEOに専念することになり、1年半後の2005年9月、任期を1年前倒しにしてCEO職からも辞任しました。

ディズニー社は、1996年、放送と通信・ネットの垣根を下げた電気法の成立直後に既に地上波3大ネットワークの一つ、ABCを買収していましたが、コムキャスト社との攻防戦以降にピクサー、マーベル、ルーカスフィルム(スターウォーズ)といった映画製作会社を次々に買収しました。

2018年には21世紀FOXを巡って、コムキャスト社と争奪戦を繰り広げた末、約8兆円で買収し、ハリウッドの映画スタジオの業界再編を主導、今日のディズニーは世界最大級のエンターテインメント企業へと成長しました。

2025年には、ネットフリックスがワーナー・ブラザース・ディスカバリーを巡ってパラマウント・スカイダンスと争奪戦を繰り広げており(※)、ネット・通信企業を交えたメディア業界再編M&Aはさらに加熱しています。

※2026年、パラマウント・スカイダンスがワーナー・ブラザース・ディスカバリー全体を約1110億ドルで買収することで決着

80年代の敵対的買収ブームの中で裁判等を通じてルールが形成された米国におけるM&Aの攻防戦は、90年代以降、大抵の場合ディズニー社の例のように展開されています。

壇上のマイク
写真=iStock.com/Prompilove
※写真はイメージです

結局、誰のための経営なのか

価格が徐々に引き上げられて、2年越しの交渉で買収が成立するケースもあれば、途中で第3の会社がより魅力的な提案を出して横からさらっていくケースもあります。

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日本での攻防戦の多くと比較したときの際立った違いとして、何を感じられるでしょうか? それは「正々堂々と正面から主張がなされ、争点が明確でわかりやすい」という点ではないかと思います。米国における攻防戦は「株主価値を最も引き上げるのは誰か」「誰に経営を任せるのがより株主にとって利益があるか」という一貫した座標軸の上で展開されます。

そこにはもちろん短期的な利益と中長期的な利益という視点の違いが出ることはあります。それも含めて、全てを「株主価値」という数字に反映する形で主張しあうのです。それを市場が株価の変動という形で評価し、最終的には株主の投票(持ち株を売るかそのまま持ち続けるか)によって勝負が決まる、これが長年の歴史を経た米国におけるM&Aの今の姿です。

普段からきちんと説明して株価を敵対的買収者が来ない水準に保つ努力をするのが本来あるべき姿ですが、買収者が現れたら被害者的に助けを求めたり仲間内で互助会を作ったりばかりしないで、堂々ときちんと説明して株主を説得しきる、最低限その覚悟ができていなければ上場会社の経営者は務まりません。

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