東芝の苦闘と終わらない迷走
ソニーとは異なる展開で最終的に日本産業パートナーズという日系ファンドに買収され上場廃止となったのが東芝でした。東芝は他の総合電機メーカーがグローバル競争で苦戦し守りに入っていた2000年代前半に、積極果敢な西田社長リーダーシップの下躍進していた会社です。
米国の原子力発電会社ウェスチングハウス社を54億ドル(約6600億円)で買収した2006年には時価総額が4兆円に迫り日立製作所に肉薄していました(ちなみに、ウェスチングハウス社自身もかつては、発電、送電機器、家電、ラジオ・テレビ放送機器など広範な製品を展開するコングロマリット企業でした)。
当時は化石燃料による地球温暖化が問題視され原子力発電が見直されていた時期で、買収そのものは戦略的に間違いでなかったのですが、ウェスチングハウスの原発建設プロジェクトの遅延・予算オーバーに、福島第一原発事故による世界的な原発事業見直しが重なり、2017年にウェスチングハウスは破産、東芝は約1兆円の特別損失を計上し債務超過に陥ります。
決算期末までに債務超過を解消せねば上場廃止、それをなんとか阻止するためにゴールドマン・サックスが60ほどのファンドから6000億円の増資資金調達を行いました。東芝は収益源の半導体メモリ事業を売却し財務体質は劇的に改善したものの、架空取引の発覚等ガバナンス問題が株価の回復を妨げます。
4兆円以上の価値が海外資本に流出した
業を煮やしたファンド株主により会社全体が入札にかけられ、2023年に売却されました。東芝は上場維持のためにアクティビスト・ファンドを株主に招き入れ、結局は彼らに退出いただくために日本産業パートナーズへの売却・上場廃止という方法を選ばざるを得なくなりました。
ウェスチングハウス買収から15年、ファンドの増資資金受け入れから5年をかけて結局何が起こったのでしょう? ウェスチングハウス関連で1兆円の富が米国に流れ、株価2600円で増資を引き受けた外資ファンド等は4600円で日本産業パートナーズに売り抜けて約5000億円儲けた計算になります。
さらに、2018年にベイン・キャピタルが主導する日米韓連合に2兆円で売却された東芝メモリは、キオクシアに社名変更して2024年12月に上場しました。2025年のAIブームに乗り、キオクシアの時価総額は10兆円に上昇していますから、4兆円以上の価値が(瞬間風速的な含み益という形かもしれませんが)、約半分を保有するベイン・キャピタル、韓国SKハイニックス連合に流れたことになります。会社の値段という切り口でシンプルに総括すると、買収会社の値段を正しくつけられず上場にこだわり会社のガバナンスが効かない東芝経営陣により、多額の日本の富が海外に持っていかれた、ということです。

