単なる「仮病」と思ってはいけない
国立成育医療研究センターは、2025年8月、全国の10歳〜15歳の小児を対象とした大規模調査を解析し、身体症状がどのくらいの「頻度」や「数」で現れる場合に抑うつ症状と関連するのかを調べた結果を次のように公表した。
● 頭痛、腹痛、背部痛、めまいといった複数の身体症状を月に1回以上訴える子どもは、抑うつ症状を持つリスクが顕著に高い。症状が4つある場合のリスクは、症状がない子どもの16.4倍に達する。
● 抑うつ症状のある子どものうち約86%が、何らかの身体症状を月に1回以上経験していた。これは、身体の不調が心の健康状態を反映している可能性を示唆する。
● 以上から、子どもの訴える身体症状の「数」や「頻度」に注目することが、見過ごされやすい抑うつ症状の早期発見に役立ち、家庭や学校、プライマリケアの現場で活用できる簡便なスクリーニング方法になる可能性を示された。
つまり「体の痛みは、心の不調のサイン」。昔なら、仮病を疑われるような訴えにも、実はちゃんとした意味があることが裏付けられたわけだ。
「五月病」を軽視しないで
ただ、頭痛、腹痛等々の痛みも、やはり主観的で、外からはなかなかわからない。
これらの問題点を克服し、心身に害をなすストレス(ストレスには自身を発奮させ、困難を乗り越えるのに役立つ、良質のストレスもある)を測定し、適切なケアにつなげるために大西博士が開発したのが「バイオピリン検査」だ。バイオピリンは、体内でストレス反応が過剰に働いたときに増える活性酸素によって生成される物質で、簡便な尿検査で測ることができる。
「この検査によって、悪玉ストレスの蓄積度、精神疾患の発症リスクの高まり、医療介入すべきタイミングを“見える化”できます。基礎研究では、精神疾患の発症予防には、悪玉ストレスが一定の濃度に達した段階で、睡眠改善などの介入をするのが有効であることが示唆されています」(大西氏)
転ばぬ先の杖ならぬ、心が壊れる前の快眠、のようなことがあるのかもしれない。
例年、5月の大型連休明けは、「五月病」を発症する若者が増える。心の軽い不調が精神疾患発症に発展しないよう、私たち大人は、主観的であろうが客観的であろうが、若者たちの心の痛みをしっかりと察知し、手を差し伸べるようにしたい。
林田 麻衣子(はやしだ・まいこ)
児童精神科医、医学博士、運動公園前はやしだクリニック(島根県松江市)理事長
大西 新(おおにし・あらた)
医学博士、イズモバイオサイエンス CEO&CTO


