必要なのは「安心して充電できる居場所」

精神疾患の発症は、思春期年代から始まる。

発症や再発の原因は、病気になりやすいかどうかの「脆弱性ぜいじゃくせい(もろさ)」と、発症の引き金となる「ストレス」の組み合せからなる「ストレス・脆弱性モデル」が有力だ。

そのため治療は、ストレスの原因から物理的・心理的に距離を置き、心と体を十分に休ませる環境を確保し、心身を回復させるためのエネルギーを蓄える「充電」が第一歩となる。

「精神科の治療は、まずその場の環境でできることを工夫してやっていくところから始めます。生活が不規則になっている場合には、『早起きは無理でも、せめて午前中に起きようね』とか。

不登校を訴えて来院する患者さんは多いのですが、不登校自体は病気ではないと、保護者に理解していただくことも必要です。学校へ行けることが治療のゴールではありません。学校に行けなくなる背景には、対人関係の悩みや学習の遅れ、朝起きるのがつらいなどの『行きづらい』と感じるきっかけがあり、環境面や身体・精神的な問題が複合的に絡み合って隠れています。それらを解きほぐし、一つずつ解決方法を考えていくことが重要です。

私は親御さんには話せないことも話してもらえるような関係を築きながら、その子に合った、安心して充電できる居場所を一緒に探すようにしています」と、児童精神科医の林田麻衣子氏は言う。

精神科に不安を抱く保護者も…

子どもたちにとって、家庭と学校は車の両輪のようなもの。治療には、両輪の一方である家庭内での環境も重要だ。

「お子さんにとって、家庭が安心できる居場所であることは何よりも大切です。そのために重要なのは保護者のメンタルヘルス。親御さんが安定するとお子さんも自然と良くなることがあるので、児童精神科では保護者の心の健康にも目を向けて、治療をお勧めするケースもあります」(林田氏)

また一般的に、精神科には薬物療法のイメージがあり、処方される薬に対して強い不安を抱いている保護者は少なからずいる。(一方でカウンセリングのイメージもあるが)

「一度飲み始めたら生涯飲みつづけなくてはならないのでは」
「薬漬けにされて、かえって悪化してしまう気がする」
「結局、薬で症状を抑え込むだけなんじゃないか(病気を治すのではなく)」

などだ。

「薬はあくまで補助輪的な位置づけです」

「薬物療法に重きを置いている先生方もいますが、そういう医師ばかりではありません。私は、薬はあくまで補助輪的な位置づけです。当院の場合、この頃元気がないなとか、不眠気味とか、イライラしているなといった、病気になる前の段階で保護者に付き添われて受診する患者さんが多いので、安心して充電できる居場所を見つけてあげるだけで回復することも少なくありません。病気を治療するというよりは、つらい状態から楽になりたいみたいな患者さんなので」(林田氏)