京セラの創業者・稲盛和夫は、町工場時代から「世界一の会社にしよう」と夢を語っていた。「経営の神様」はどのような思想を持ち、世界的企業に育て上げたのか。稲盛ライブラリー監修『稲盛和夫 その人生と名言』(宝島社)より、一部を紹介する――。
稲盛和夫氏。2011年4月8日、フィラデルフィアの化学遺産財団で開催された2011年ヘリテージデーに撮影
稲盛和夫氏。2011年4月8日、フィラデルフィアの化学遺産財団で開催された2011年ヘリテージデーに撮影(写真=Science History Institute, Conrad Erb/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

「考え方×熱意×能力」の掛け算

才能を持った人や努力している人が常に成功し、豊かな幸せを手にしているわけではありません。学歴のない、経済的にも苦しい出自の人が事業で成功している姿もしばしば目にします。そんな人たちを見て「私のほうがいい大学を出ているのに」などと、妬む人も少なくありません。

才能もあって、人並み以上の努力もしているが、なぜか成功に恵まれない。そういう人たちに足りないのは人間としての正しい「考え方」である、と稲盛氏はいいます。人生や仕事の結果は、「考え方×熱意×能力(才能)」を掛け算した答え。このうち能力と熱意は0点~100点まである。だから「自分には才能がある」と驕って努力を怠った人よりも、才能に乏しくても熱意を持って努力した人のほうが、素晴らしい結果を残すことができます。

さらに重要なのは「考え方」です。考え方とは、生きる姿勢であり、人生で目指す方向性です。これはマイナス100点~プラス100点まであるので、どんなに才能に恵まれ、努力を重ねている人でも、考え方によって、人生の結果は180度変わってしまうというのです。

「何を目指して生きるのか」が鍵を握る

稲盛氏は、京セラを創業して間もない頃に、この方程式を考えるに至りました。背景には、子どもの頃、親戚のおじさんがよく遊びに来ては酒を飲み、知り合いの議員を引き合いに出して「子どもの頃は俺のほうが優秀だった」とバカにしていたことがありました。

また稲盛少年は、おじさんが働かない自分を正当化して、「隣のバカは起きて働く。俺は賢いから、寝ていてもいいんだ」と、愚直に働いている人を見下していたことに強い反発を感じました。毎日早起きして一生懸命働く人のほうが偉いに決まっている。才能は熱意でカバーできる。さらに、その人の考え方がプラスかマイナスか、「何を目指して生きるのか」こそが人生の鍵を握ると気づいていったのです。