楽天的だから身の丈以上の目標に挑める
しかし実際には、近所にあった京都機械工具という会社はたいへんな活況ぶりで、稲盛氏が深夜に帰ろうとしても、まだ作業の音が聞こえている。早朝に出勤すると、もう従業員は一生懸命働いている。当時の京セラにとっては一生かかっても超えられないと思うほど大きな存在でした。
ましてや中京区には、後にノーベル化学賞受賞者が現れるハイテク企業の島津製作所がありました。これを超えるのも途方もないことだと思いながら、それでも「中京区一、京都一、日本一、世界一」と夢を唱え続けていました。
それは「努力さえすれば必ず実現できる」と稲盛氏が信じていたからです。偉大なことを成し遂げる人には、きまってそんな楽天的な面があると稲盛氏はいいます。
大きな目標に対し「難しそうだ」と思うようでは逡巡やためらい、疑問が生じ、果敢に挑戦する心が萎えてしまいます。心の底から「できる」と思い込むことで、どんな障害をも乗り越える闘志が湧いてくるのです。
自身の可能性を疑わず、「世界一の会社にする」というような身の丈以上の目標をまず宣言するからこそ、考え方が変わり、行動が変わり、人間は無限に成長していくことができる。そう信じ続け、そして実証したのです。
何かを成し遂げる人は、困難にぶち当たったときでも、
(中略)
「無限の可能性を信じ、これから努力をすればいいだけのことだ」と信じ込む。
そういう人だけが、壁を突破していきます。
『考え方』(大和書房)より
「手の切れるような製品を作れ」
稲盛氏は、最後まで手を抜くことなく、完璧といえる状態を目指し続け「最後の1%の努力を怠らない」意識の重要性を説きます。京セラのもの作りの鉄則は、「手の切れるような製品を作れ」。本当に素晴らしい製品に対し、人が触れるのもためらってしまうような畏敬の念を表した言葉です。稲盛氏は、製品開発の従業員にもしばしばこの言葉をかけ、高い成果を求めました。
京セラで半導体パッケージをファインセラミックスで作るための開発を行っていた際、こんな出来事がありました。研究開発部門が苦心の末に完成させたサンプルは、技術的な性能は十分にクリア。しかし、稲盛氏はそれを見た瞬間、「薄汚れている」と感じました。原料を焼成する過程で炭化して製品が灰色っぽくなっていたのです。

