全工程で“良品”でなければならない
開発リーダーは性能に問題がないことを主張するも、稲盛氏は「見た目も触れれば手が切れてしまうのではないかと怖くなるくらい、美しいものでなければならない」と容赦なく突き返しました。
“十分”ではなく“完全”を目指す。この徹底した品質への執念が、稲盛氏の完璧主義の真髄です。
稲盛氏の完璧主義は、実体験に基づく切実な必要性から生まれました。セラミック製品の製造には、原料、成型、焼成といったさまざまな工程があります。そのすべての工程で良品でなければ、完成品とはならないのです。
京セラがまだ小さな会社だった頃、ほとんどが受注生産でした。顧客と約束した納期に合わせて製造した製品が、最終段階でわずかなミスにより不良品となってしまう。そこで納期の延期をお願いしに行った営業担当者が「ボロ会社に頼んだばかりに生産計画に狂いが生じた」と厳しく叱責され、半ベソをかきながら帰ってくることがありました。
ちょっとしたミスで信頼関係が崩壊する
製造から納品までの全工程で、ほんの些細なミスであっても、それまでの努力がすべて水泡に帰す。材料費、加工費、電気代などのあらゆるもの、そして何より顧客との信頼関係が一瞬で失われてしまうのです。
こうした辛酸をなめてきた稲盛氏は「一瞬の気の休まる間もないくらいの完璧主義を貫き、パーフェクトを狙っていかなければならない」という信念を持つに至りました。
自分を信じ、すべての工程で妥協を許さない姿勢は、創造的な仕事の基盤。最後の1%の努力を怠らず、理想の実現まで粘り続ける情熱こそが、京セラを世界的企業にした原動力だったのです。
自分自身の努力を実りあるものとするためにも、常にパーフェクトを求めなければなりません。
『考え方』(大和書房)より


