勝家と秀吉の救援に心を動かされたか

ここへ、先述の通り「貴様あ! 裏切ったな‼」と押し寄せてきたのが浅井・朝倉勢である。工事中の城館レベルのところに7000余騎で押し寄せているのだから、完全にキレている。二流の裏切り者なら、ここでまた裏切るところだが継潤は違う。『浅井三代記』は次のように記す。

世上坊も聞ゆる兵なれは走廻士卒の気をはけましける。され共猛勢にて責平押に押寄けれは、惣構矢庭に打破り、我先にとこみ入はかゝはり難く見えし所に……

抄訳:継潤もさすがの勇士、必死に走り回って皆を鼓舞したが、敵の勢いは凄まじい。あっという間に外郭を突破され、敵兵がなだれ込んできた。もはや絶体絶命……そう思われた

ついさっき裏切ったばかりだというのに、やたら本気で戦っている。それが幸いしたのか、すぐに援軍は駆けつけた。

柴田木下は近所なれは……西の方川毛村の方へ討ていて宮部を助来り、味方後へまはりけれは……柴田木下はおめきさけむて切てかゝる。

抄訳:近くの虎御前山にいた柴田勝家と木下秀吉が、西から回り込んで救援に駆けつけた! 敵の背後から「うおおおおお!」と雄叫びを上げて突撃したのである。

秀吉も勝家と共に、これは助けなきゃいけない‼ と駆けつけてくる。継潤にしてみれば「来てくれた‼ しかも、あの勝家も一緒だとォ‼」と、感激もひとしお。これは、一生ついて行くと決めたはずである。

出世の理由は「まっすぐすぎたから」

なぜ秀吉は継潤をここまで引き立てたのか。

答えは単純だ。継潤が、まっすぐすぎたからである。

交渉では本気で条件を突きつけ、寝返った直後の絶体絶命の場面でも本気で戦い、援軍が来れば本気で感激する。損得で動く男なら、7000余騎に囲まれた時点でまた裏切っている。だが継潤はそうしなかった。策略も打算も関係ない。ただ目の前のことに全力で突っ込んでいく。

ある意味『週刊少年ジャンプ』の主人公的な真っ直ぐさがある。

だが、その無骨な真っ直ぐさが正しかった。秀吉という天下人は、計算高い人間を誰よりも知り尽くしていた男だ。だからこそ、この純粋な熱さを持つ男を、手放せなかったのではないか。「こいつはちゃんと報いてやらないとまずい」そう思わせた時点で、継潤の勝ちである。

ここまで書いてみると「お前の子供を人質に差し出せ」も、別に深い思慮より「よーし、最初は強気だな、強気、喧嘩と一緒だな」で口走っただけのようにも思える。

こうして、浅井の家臣から始まって、最も出世した男。その理由は、義理でも策略でもなく、青春ドラマの主人公みたいなまっすぐさだったのかもしれない。

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