医療ツーリズムが不正の温床に

2024年には整形業界の外にも手を広げた。韓国人の携帯電話販売店オーナーを引き込んで、免税品の購入代金や語学学校の授業料にまでマネーロンダリングの対象を拡大している。税関当局は3人全員を検察に送致した。

コインデスクによれば、マネーロンダリングに使われた暗号資産取引所は無認可で、素性は不明。利用された暗号資産の種類すら、いまだ特定されていないという。

美容業界は市場規模が大きいだけに、マネーロンダリングの手段として悪用されやすい。韓国の美容整形産業は約110億ドル(約1兆6500億円)規模に達し、中国からの美容整形客は年平均100%のペースで増え続けている。DLニュースによれば、医療観光市場は2033年までに31億ドル(約4650億円)に達する見込みだ。正規の決済がこれだけの規模で流れ込む市場だけに、不正な取引も目立ちにくい。

韓国関税庁は事件を受け、外国人向けクリニックへの立入検査の強化を打ち出した。DLニュースによれば、同庁の担当官は中央日報に対し、「海外医療ツーリズム分野における違法な外貨両替の事例を防止しなければならない」と語っている。

「詐欺疑惑」を放置したウィーチャットペイ

各国で犯罪インフラとして悪用されることもある、特定の決済プラットフォーム。サービス提供側は、どう対応してきたのか。

サウスチャイナ・モーニングポストによると、香港金融管理局(HKMA)はテンセント傘下のモバイル決済サービス「ウィーチャットペイ」の香港法人に、制裁金87万5000香港ドル(約1750万円)を科した。

WeChat Pay
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マネーロンダリング防止とテロ資金供与対策の顧客審査で、同社は適切な管理体制を整えていなかった。不備が認定された期間は、2016年8月から2021年10月まで、実に5年超に及ぶ。一例として、法執行機関から詐欺への関与が疑われる携帯番号についてデュー・デリジェンス(調査・審査)を実施するよう通知を受けても、リスク評価を実施しなかった。そもそも、その番号が同社の顧客本人のものであるか、確認を怠っていた。

輪をかけて深刻なのは、こうした憂慮すべき事態が事実上放置されていた点にある。HKMAの調査によれば、法執行当局はウィーチャットペイに対し、詐欺への関与が疑われる500の口座について、計1827件の情報を共有していた。

にもかかわらず、同社は最短でも80日、対応を行わなかった。最長では900日放置されていたといい、約2年半も問題を先送りしていたことになる。

HKMAは制裁金の根拠として、「マネーロンダリング・テロ資金供与リスクの管理体制について、業界に明確な抑止メッセージを送る必要性」があると述べている。これに対しウィーチャットペイ側は、不備を認識した時点で自主的に当局へ報告し、HKMAの指導のもとで是正措置を講じたとし、約3年前から管理体制を改善していると回答した。