「高強度の運動」であることが重要

ここで重要なのは、HIITが一つの決まったやり方ではなく、上位概念だという点です。HIITという言葉の中には、強度設定、動作選択、回復の取り方など、非常に幅広い設計思想が含まれています。そのため、同じ「HIIT」という名称が使われていても、体に入る刺激の質は大きく異なります。

だからこそ、「HIITをやっているのに体が変わらない」という人が出てきます。時間が短いだけで強度が曖昧な運動や、インターバル構造はあっても全身が十分に動員されていない運動では、体が適応を起こす条件が満たされません。

体力がある人が、比較的ゆっくりとしたテンポの腕立て伏せや自重スクワット、腹筋運動などをサーキット形式で行うこと自体は、決して無意味ではありません。

ただし、その場合に体が受け取っている刺激は、本書で扱う「高強度域への進入」を狙ったHIITとは異なるものになりやすい、という点は押さえておく必要があります。

HIITで重要なのは、「きつそうに見えるかどうか」ではありません。心拍数、筋出力、神経系の動員が、体が適応を判断する強度領域に入っているかどうか。見た目のきつさや疲労感があっても、その条件に達していなければ、体は大きく変わりません。

HIITは万能な方法ではありません。しかし、体が本気で適応を起こす強度領域に入り、その刺激が回復と結びついたとき、HIITは非常に効率の高い体力づくりの手段になります。

スプリンター
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「20秒動く→10秒休む」を繰り返す

本稿では、HIIT研究で示されてきた原理と、現場で再現性が高い条件を整理し、筋肉・心肺・神経・脳が同時に動員される強度領域に、意図的かつ安全に入るための設計を「超HIIT」と呼んでいます。

超HIITは、きつさを競うものでも、短時間で消耗するための方法でもありません。体が変わる条件を理解し、その強度を必要な分だけ使い、壊れずに積み上げていくためのシステムです。

HIITという考え方が世界に広まるきっかけとなったのが、短時間・高強度・インターバル構造を用いた運動生理学研究です。20秒間の高強度トレーニングと10秒間の休憩を繰り返すプロトコルでは、ごく短時間にもかかわらず、有酸素能力と無酸素能力の両方が大きく向上することが示されました。

この研究の本質は、「短時間でも効果がある」という点そのものではありません。重要なのは、体が一定以上の強度領域に入ったとき、有酸素系・無酸素系・神経系を含めた全身のシステムが、一体として動き出すことが明確に示された点です。