「細木は悪いことをしていないよ」ヤクザが断言

そのため私は細木の渋谷時代をよく知っているはずの住吉会現役幹部のIを紹介してくれるよう頼んだ。

金子氏はIを紹介することを確約してくれた。

翌4月25日、金子氏の態度は豹変した。

私はこの日、立川市内にある自宅を出て、午後2時ごろ、西武新宿線の高田馬場で山手線に乗り換えようとした。そのとき金子氏から私の携帯電話に架電があった。金子氏はこう言った。

「あんたの取材を受けた後、あんたから取材があった、と細木に電話した。細木の家が(芸者)置屋みたいなことをしていたのは事実だけど、自分はパン助みたいなことはしてないと細木は言っていた。細木はそこまで認めてるんだ。どうだろう。あんたがいまさら細木について二番煎じ、三番煎じのことを書いてもしょうがないじゃないか。細木は悪いことをしていないよ」

金子氏はぬけぬけとこう言った。

「細木を擁護するように書いてくれないか」

私は答えた。

溝口敦『喰うか喰われるか 私の山口組体験』(講談社)
溝口敦『喰うか喰われるか 私の山口組体験』(講談社)

「私の一存で決められる話ではないし、編集部に諮らなければならない。それに電話でお話できる内容でもない」

「書かないほうがいいと思うけど、どうしても書くというなら、細木を擁護するように書いてくれないか。そのほうがお互いのためだ」

金子氏はなかば恫喝するようにこう言って電話を切った。金子氏との電話のやり取りは4〜5分だったろう。これで金子氏に頼んだIを紹介してくれる話も吹き飛んだ。

おそらく細木は金子氏から電話を受け、溝口が細木について取材を進めていることを知った。

その上で金子氏に「連載を中止させる方向で動いてくれるよう」依頼したのだろう。だから金子氏は次の日、私に「書いてもしょうがない」「書かないほうがいい」と、わざわざ自分から溝口に電話したのだろう。

正直、私は金子氏の言葉に脅えることはなかったが、人によっては元職とはいえ、住吉会の名に強い圧力や恐怖を感じるだろう。間違いなく細木は暴力団を使って、私に「書くな」と言ってきたのだ。

大相撲モンゴル場所の観戦でウランバートルを訪れた故・細木数子氏
写真=共同通信社
細木は暴力団を使って「書くな」と言ってきた(大相撲モンゴル場所の観戦でウランバートルを訪れた故・細木数子氏。2008年8月26日)
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