情報をシャワーのように浴びてみる

ところで、私がアナロジー的な思考を特に駆使するのは、情報の整理をするときです。現実の世界で日々行われる経済活動は貴重な生きた情報です。それらはだいたい新聞に集約されています。そこで大小さまざまな記事に目を通し、情報をシャワーのように浴びる。すると、情報同士のアナロジーが浮かび上がり、何らかのパターンにはまるようになります。1度はまれば、補強する材料もどんどん出てくる。こうして情報が整理されると、何が重要なのか、本質が見えてきます。

部下とのコミュニケーションについても同じことがいえます。例えば、冷熱事業本部に移ったとき、コストダウンのいきすぎで商品品質に問題が生じ、クレーム対応に追われたことがありました。私は毎朝始業15分前に部長級を集めて、立ったままミーティングを行い、前日のクレームを報告させ、その場で対応を指示しました。

すると、コミュニケーションを重ねるうちに、対応のパターンが浮かび上がり、明文化しなくても、ある種の基準が共有されるようになった。クレームがきても、誰もが「これはあのケースと共通する」と類推してすぐに動き、問題を解決していきました。

アナロジーは、ものごとの構造と関係性を見抜くための方法です。当社には約700種の製品群がありますが、見渡すと類似性や共通性で大きくくくれます。それをどう結びつけるかを考えるのが経営者の仕事で、A4の紙4~5枚に描いて並べ替えをしながら、でき上がった絵がそのまま事業計画書の1ページになったりもします。

例えば、エネルギー関連事業は「つくる」「使う」「ためる」といったくくり方ができます。「つくる」の中も、環境汚染物質の排出が少ない順に左から並べ、1番右側にくる石炭・石油関連の隣に汚染物質を「とる」事業を置いて結びつけると、多様なニーズに対応できる全体像が一目でわかります。

アナロジー的な思考ができる人は、問題意識の高い人です。私自身、いろいろな人と現場に行っても、わき上がる疑問は1番多いでしょう。航空宇宙事業本部から産業機器事業部へ異動を命じられたときも一瞬、「えっ」と思いましたが、新しい職場にすぐに適応できたのは興味津々だったからです。

先入観を持たず、何ごとにも興味を持ち、疑問を発する。思考力の原点はシンプルなものだと思います。

三菱重工業代表取締役会長 大宮英明
1946年、長野県生まれ。都立日比谷高校卒。69年東京大学工学部航空工学科を卒業し、三菱重工業に入社。99年名古屋航空宇宙システム製作所副所長、2003年取締役冷熱事業本部本部長、05年取締役常務執行役員、07年取締役副社長執行役員を経て、08年社長。13年より会長。
[座右の銘・好きな言葉]「技術はだませない」
[最近読んだ本]歴史小説が多い。『日輪の遺産』(浅田次郎)、山本一力、藤沢周平など
[ものごとを考える場所]会社。家では思いついたとき、携帯のメモ機能に表題だけ打っておく
[顧客の声を知る手段]全国各地の「ビーバーエアコン販売店」店主と、ざっくばらんに話をする
(勝見 明=構成 市来朋久=撮影)
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