「裏切り者」は絶対に許さない性格
トランプ氏が同盟国に軍事協力を迫れば迫るほど、メローニ首相はその板挟みに苦しむことになる。
ここにトランプ外交の根本的な問題が浮かびあがる。
トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げる分、同盟国の国内事情への配慮を欠きやすい。さらに際立つのは、相手が自分に近いと見なすほど、忠誠心を強く求める傾向があることだ。メローニ首相は「自分の側の人間」だからこそ、協力しないことへの怒りがより激しくなる。
また、仮想敵である中国に対してさえ、アメリカの国益になると判断すれば意外なほどの譲歩を見せることがある。つまりトランプ外交において、「近さ」は必ずしも優遇に結びつかない。
そうなると、蜜月関係の維持にさほどメリットがなくなってしまう。
メローニはトランプほど自由ではない
もう一つの構造的要因として見逃せないのが、民主政治の制度的文脈である。メローニ首相はトランプ大統領と政治的なスタンスが近くても、置かれている政治環境がまったく異なる。
アメリカ大統領は固定任期制のため、議会や世論の反発をある程度無視して外交判断を下すことができる。一方、イタリアの議院内閣制では、日本と同じように、首相は常に連立内の合意と国会の信任に依存している。
野党の攻撃、労働組合の圧力、カトリック世論の反発、連立与党内の反目などが、メローニ首相の「外交的自由度」をいつも制限する。
イタリアでは全国規模のゼネストが頻繁に発生し、保守系政権でさえ労組の動員力の前に政策を修正せざるをえない局面がある。日本やアメリカの保守政治家と比べて、メローニ首相がトランプ大統領への「友情」を貫くことは、制度的にはるかに難しい環境にあるのだ。
そもそも、「思想が近いから政策も一致する」という見方は、各国の政治制度や国内構造を無視したものだ。移民政策やLGBT問題のような国内文化戦争の争点では価値観の共鳴があったとしても、エネルギー安全保障や軍事作戦への参加という「生活と安全」に直結する問題になると、各国の国益が前面に出てくるのが当然だろう。
