看板政策は否決、次の選挙に暗雲
外交圧力に加えて、メローニ首相の国内基盤も同時期から揺らぎ始めていた。2026年3月22〜23日に行われた司法制度改革をめぐる憲法改正国民投票で、賛成約47%、反対約53%という結果で否決されたのだ。
この改革は、裁判官と検察官のキャリア体系の完全分離を柱とするもので、メローニ首相が看板政策として推し進めてきたものだった。司法を「左派の牙城」と位置づけて批判する保守勢力の論理からすれば、訴求力の高い改革テーマのはずだった。
それにもかかわらず否決された背景には、単に改革内容への反発だけでなく、「政権全体への不満が反映されている」という指摘がある。中東情勢の緊張やエネルギー価格の高騰や深刻な人手不足による景気停滞に不安を抱えた有権者が、今回の投票を「メローニ政権への不信任」の表明手段として利用したと考えたわけである。
投票率は約60%と予想を大幅に上回る高さだった。2016年の国民投票敗北で首相の座を退いたマッテオ・レンツィ元首相は「指導者が魔力を失うと、人々は一斉に懸念を抱き始める」と語り、今回の結果はメローニ首相の「勝者のオーラ喪失」だとレッテルを貼った。
2027年に予定される総選挙に向けて、これまで分断されていた中道左派勢力(民主党と五つ星運動)の連携機運が高まっていることに、メローニ政権は警戒している。
2025年末には最大労組CGILが主導する大規模ストライキも起きており、政権への逆風は外交問題に留まらない。支持基盤が軟化している局面で、不人気な対外政策に踏み込むことは政権基盤をさらに弱体化させるリスクを孕む。
昨年は、約50万人にも達する大規模な移民受け入れを決めており、メローニ首相は妥協を重ねざるをえない苦境にある。
「橋渡し戦略」の消費期限を迎えた
メローニ首相がトランプ大統領との近さを国際的資産として活用してきた戦略の核心は「トランプとEUの橋渡し役」という地位の確立である。
ローマのルイス大学政治学者ロベルト・ダリマンテ教授は「アルジャジーラ」の取材に対して、「メローニ首相はトランプと欧州同盟国の間の橋渡し役を果たそうとしていた。当初はうまくいく戦略に見えたが、今となってはそれが負債になり、修正を迫られている」と述べている。
この「橋渡し戦略」は一定の成果を上げた時期があった。対米関税交渉でメローニ首相は「トランプと話せる唯一の欧州指導者」としてEU内で一定の発言力を持ち、イタリア国内でもその国際的存在感が支持率に好影響を与えていた。
ところが、イラン戦争の勃発とともに、その構図は逆転する。トランプに近すぎることが、今度はコストになり始めたのだ。「なぜイスラエルの戦争に付き合わなければならないのか」というイタリア国民の憤りは、ガザでの民間人被害を繰り返し目にしてきた映像の蓄積とも相まって、強い反発を生んでいる。
