警察官から「海峡の許認可官庁」へ
海峡が国際公共財として機能するのは、「誰の船でも一定のルールの下で通れる」という中立性があるからだ。今回、米国はその中立性を部分的に剥ぎ取った。4月13日に配信されたロイターの記事によれば、英仏は封鎖への参加を拒んだ。
さらに、4月14日に配信されたロイターの記事によれば、英仏は別枠で海峡の自由航行を回復させるミッションを模索している。これは今回の措置が、多国間の自由航行作戦というより、米国が単独で通行条件を決める権力の行使であることを示している。
ここで重要なのは、海軍の行動が海の上だけで完結しないことだ。どの港に入ったか、どの貨物を積んだか、どの保険が付くか、どの銀行が決済を通すかまで、すべてが「通ってよい船」の条件になる。海の上の封鎖が、保険、港湾、金融のルール変更にまで波及する。
トランプが握りにいったのは、海峡そのものよりも、海峡を使う資格の審査権なのである。
言い換えれば、米国は「海峡の警察官」というより「海峡の許認可官庁」になろうとしている。通れる船と通れない船を分けるだけでなく、通るためのコストまで引き上げるからだ。ここに、軍事と市場操作が一体化した今回の措置の本質がある。
「核問題」は表向きの目的にすぎない
もちろん、公式目的は対イラン圧力である。ホワイトハウスは、イラン海軍の無力化と核兵器保有の阻止を繰り返し作戦目的として掲げてきた。これは額面どおり受け取ってよい。
だが、4月14日に出されたホワイトハウスの声明は、今回の海上封鎖を「安全な通航の回復」と説明するだけでなく、米国のエネルギー・ドミナンスが「中東原油から切り離された国々へのライフラインになる」ともアピールした。
軍事行動の説明に、米国産原油や液化天然ガス(LNG)の代替供給力の宣伝が混ざるのは偶然ではない。核問題が表看板だとしても、政権が同時に見据えているのは、「危機のとき、最後に頼れる供給者は誰か」という世界の認識を書き換えることだ。
もし狙いが核問題だけなら、作戦説明と原油・液化天然ガスの供給力アピールを同じ文章に混ぜる必要は薄い。にもかかわらず政権は、自由航行の回復とエネルギー・ドミナンスを一体の成功物語として語っている。つまり今回の一手は、イランを屈服させるためだけでなく、輸入国側に「有事のときは米国側に寄ったほうが安全だ」と学習させる働きも持つ。
この意味で、今回の作戦はイランとの交渉カードであると同時に、同盟国や競争国に向けた供給秩序のデモンストレーションでもある。

