日本は「調達先」を増やすべき

4月15日に配信されたロイターの記事によれば、日本政府は追加の備蓄放出を進める一方、米国、マレーシア、アゼルバイジャン、ブラジル、ナイジェリア、アンゴラなどへ代替調達を打診している。

危機対応としては妥当だ。だが、本当の教訓は「何日分ためるか」だけではない。「どの海から、どの契約で、どの原油を持って来られるか」を平時から変えておくことにある。

備蓄は時間を買う手段であって、脆弱性そのものを消す手段ではない。真に問われるのは、危機のたびにどの地域へ振り替えられるのか、そのための船、保険、決済、精製能力を平時から持っているかどうかだ。

日本の弱点は、中東依存そのものだけではない。依存先、航路、油種、保険、決済の選択肢が狭いことである。どれか一つが詰まっても他で回せる構造になっていなければ、備蓄を放出しても市場の不安は消えにくい。逆に言えば、日本が本当に増やすべきなのは在庫ではなく、振り替え先のポートフォリオなのである。

煌煌と明かりの灯る工場群と石油コンビナート
写真=iStock.com/primeimages
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石油需要を西半球に引き寄せる

日本に必要なのは、第一に湾岸外の長期契約を増やすこと、第二に中東以外の油種を処理できる製油所の柔軟性を高めること、第三に船舶・保険・決済まで含めた調達能力を強くすること、第四に米州での上流権益やオフテイク契約を厚くすることだ。そうしなければ、次のホルムズ危機でも日本はまた「値段を受け入れる側」「物流条件をのまされる側」に回る。

日本企業に必要なのは、平時の最安値調達だけを評価する発想から抜けることだ。多少高くても止まりにくい供給源を持つこと、危機時に切り替えられる油種や船腹を確保すること、米州やアフリカとの関係を「非常時のオプション」として契約化しておくことが重要になる。エネルギー安全保障とは、在庫の厚みだけでなく、選択肢の厚みなのである。

トランプのやり方は乱暴に見える。だが、ホルムズ海峡を「選別装置」に変え、世界の限界需要を西半球へ引き寄せる作戦だと見ると、そこには冷酷な筋が通っている。本稿の見立てでは、今回の狙いは、イランにウランを手放させることだけでなく、「安全な供給はどこにあるのか」を世界に学び直させることにもある。

そう考えると、この逆封鎖は軍事作戦であると同時に、供給秩序を組み替える地経学の実験でもある。

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