遺族は医療者ではなく国を責めた
2008年10月、今度は東京、墨東病院で事件が起きました。
36歳の妊婦が脳出血を起こし、墨東病院を含む8つの病院から受け入れを断られます。最初の要請から1時間以上経過した後、ようやく墨東病院が受け入れ、帝王切開で子どもは無事でしたが、3日後に女性は死亡しました。
墨東病院では医師の退職が相次いでおり、2008年7月から土日祝日の当直医を2人から1人に減らしていました。不運にも事件は土曜日に発生します。
事件後、遺族の夫は医療者を擁護する記者会見を開き、医療体制の改善を訴えました。
個人の医師を責めるのではなく、システムの問題だと理解していたのです。
今日もどこかで「たらい回し」が起きている
「医学部定員増員」の施策以降、救急医療に従事する医師を直接的に増やす施策や、救急医療を魅力的にして医師を引き寄せる施策など、救急医療の人員不足を改善する施策は見当たりません。
案の定、状況は変わらず、その後2020年のコロナ禍で再び問題が顕在化しました。2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、状況はさらに悪化しました。院内感染を恐れた中規模病院が発熱患者の受け入れを拒否し、救急車が2時間以上かけて十数カ所の病院を回っても搬送先が決まらないケースが続出します。
東京では救急患者の受け入れを5カ所以上で断られた事例が、2020年3月に931件と前年同月の700件から急増しました。
2021年8月には、妊娠8カ月の女性がコロナに感染し自宅療養中に出産したものの、受け入れ病院が見つからず新生児が命を落としました。同月、救急搬送困難事案は第2週にピークの3361件を記録し、コロナ以前の2019年と比べて195%増加しました。
かくして救急医療の人不足は解消されずに、その後も有効な打開策は何一つ実施されていません。



