全年代を通して増加した推し活
推し活は、自分の中に明確ながんばる目標がなかった人たちにも、推しの活動を応援する、みんなで一緒に推しが抱いている夢を実現させる、という文脈を与えた。推しを応援するのが生きがい、という人は、いまや若者だけでなく全年代を通して増加している。
こうやって見てみると、若者が仕事にやりがいをあまり見出さなくなったことには、現在の時代環境が大いに影響していそうだ。若者はある意味、とても素直にこの時代でクローズアップされている価値観を吸収しているだけだとも言える。
生きがいは自分で持てればよいのだから、他の人から理解不能であったとしても構わない。そもそもSNSのお陰で、かなりマニアックなことだったとしても、同じことに生きがいを感じる人たちが容易に見つかる環境が成立している。
それだけ多様でニッチな生きがいの形が包摂される世になったことは、社会の進歩や成熟の証とも言えるだろう。
仕事からの自由を求める価値観
こうした価値観の広がりは日本だけに限ったことではない。
「仕事はそこそこにして、その分、趣味を楽しもう」という動きは、アメリカでも見られている(意外と知られていないが、アメリカ人の平均労働時間は日本人のそれより長い)。
例えば、アメリカでは2012年前後から若者の間でYOLOという言葉が流行した。これはYou Only Live Once(人生一度きり)の略語で、ラッパーのドレイクが楽曲「The Motto」でこの言葉を使ったことなどをきっかけとして、SNSやポップカルチャーを通じて爆発的に広まった。
「今この瞬間を楽しんで後悔しない生き方をしよう」という考え方だが、YOLOは衝動的な旅行や高価な買物、危険な遊びなど、無謀で無責任な行動を正当化する口実として使われた結果、批判も多く、そのうち下火になった。
YOLOと同時期に始まったムーブメントでありつつ、長期的な視点で仕事に依存しない人生を目指すという対極的なアプローチを取ったのが、日本でも話題になったFIRE(Financial Independence, Retire Early)だ。
徹底的な節約と資産形成を通して早期リタイアを目指すというもので、YOLOが「今」の快楽を優先したのに対して、FIREは「未来」の自由を優先しているという点で、一見すると真逆のように感じられる。
ただ、つまらない仕事や長時間労働から早期に解放され、人生の時間を自分の好きなように使いたいという点で、仕事からの自由を求める価値観には共通しているところがあった。

