米国若者の「静かな退職」ムーブメント

コロナ禍を経た2020年以降になると、仕事を辞めるわけではないが努力は最低限にしよう、というアプローチが出てくる。

「静かな退職(Quiet Quitting)」がアメリカの若者の間でムーブメント化したのは2022年頃からで、退職はせずに仕事を続けつつも、必要最低限の努力だけを行い、それ以上の貢献(残業、ボランタリーな活動、積極的な意見表明など)をしないという働き方だ。

さらに2023年頃からは、「レイジー・ガール・ジョブ(Lazy Girl Job)」という言葉も流行した。直訳すると「怠惰な女の子の仕事」だが、その意味合いは少し異なる。

TikTokで広まったこの言葉は、「最小限の努力で高い給料を得られ、私生活に支障をきたさない仕事」を指している。よしとされている仕事の特徴は、

・対人関係のストレスが少なく、定型的な業務が多い
・リモートワークが中心
・残業がほとんどなく、定時で帰れる
・十分に生活できるだけの給料を得られる

といったもの。「静かな退職」は今している仕事に対して必要最低限の働き方をすることだが、「レイジーガールジョブ」はストレスの少ない仕事そのもの(職種や業務内容)を積極的に探すというアプローチだ。

この他にも、週全体のストレスを軽減するために月曜日は最低限の業務だけをこなす、「ベア・ミニマム・マンデー(Bare Minimum Mondays)」という、より実行しやすそうなスタイルが同時期に提唱されていたりもする。

グローバルトレンドとしての脱・仕事

こうした、YOLO、FIRE、静かな退職、そしてレイジー・ガール・ジョブといった一連のムーブメントは、「仕事は自分の人生を豊かにする手段に過ぎず、そのために生きるものではない」という、現代の共通した価値観を反映している。

ただし、こうした海外のトレンドと日本の違いは、その割合にあるかもしれない。本書のパートナーで、2024年に『静かに退職する若者たち』(PHP研究所)を執筆した金間さんによると、アメリカにおいて静かな退職を実行する人(Quiet Quitter)は、いくつかの主要な調査会社の統計によると、せいぜい1割から2割程度だ。

少数派とはいえ、そのくらいの割合になると、一つのトレンドを巻き起こすという意味では、アメリカらしいとも言えよう。

さらにアメリカらしいという意味では、Quiet Quitterたちに対し、国内で多くの批判的な意見も集まっているという。

金間大介、酒井崇匡『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル』(SB新書)
金間大介、酒井崇匡『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル』(SB新書)

「努力は若者の権利であり社会に対する義務でもある」「がんばらない姿勢は現実逃避に過ぎず、仕事の不満や燃え尽きに対する万能薬ではない」「本当に休息を必要とする人もQuiet Quitterと思われてしまう」、といった具合だ。こうして対立した議論をぶつけ合い、価値観の違いをクリアにしていこうという姿勢は、日本にはあまりないかもしれない。

それに、そもそも日本では、はるか以前から脱・仕事の代表格である「指示待ち人間」は存在している。「窓際族」も「働かないおじさん」も健在だ。

この辺りは、さすが課題先進国ニッポンというところか。アメリカで最近話題になった現象を、何十年も前から先取りしている。

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