自分らしさは大事でも、今の若者と大違い
「かつての若者」の実態を理解するためにまず参考にしたいのは、当時の『週刊東洋経済』(東洋経済新報社)だ。まだ紙の雑誌がよく売れていた時代。分厚い取材に、誌面構成も気合が入っている。
見ていくのは、2001年3月号の特集記事「なぜ僕らは会社を辞めるのか」と2004年3月号の特集記事「深刻化する若年離職」だ。同記事では、就職して間もない20代の若者たちと、彼らを迎え入れた企業人事部の対比構造が描かれている。
そのうち、企業人事部の担当者が当時の若者たちを描写するコメントを抽出してみよう。
「(今の)若者たちは、“自分らしさ”を大事にしている。組織の論理で動く会社という場所に、失望するのもわからなくはない」
「採用するにはコストがかかる。育てる費用はもっとかかる。一人前になるまで、少なくとも3年は給料泥棒のようなもの」
「給料泥棒」とは何とも昔らしい強い表現だ。しかしながら、言っていること自体は今の人事部とあまり変わらないように感じる。「今の若者は自分らしさが大事」「採用コスト、育成コストがかかる」といったコメントなどは、むしろ令和じゃないかとすら思える。
ということは、彼らが直面していた若者たちも、やはり令和の今と変わらない、安定志向重視の横並び軍団ということだろうか。仕事に対するモチベーションは最低限で、プライベートを重視した働き方を「自分らしさ」と表現する。当時からそんな若者たちが多かったのだろうか。
――と思ったら、大間違いだった……。
仕事に対する熱意を表現し、実際に行動
そこで次に、同記事で登場する若者たちにフォーカスしよう。記事は、複数の若者たちに対するインタビューで構成されている。彼らはみな、しっかりとした“自分”を持っている印象だ。
例えば、総合商社を2年6カ月で辞め、コンサルティング企業に転職した26歳男性は、「商社での2年半は自分探しと思って、(何でも)やりました」と、インタビューに答えている。
あるいは、ITベンチャー企業へ転職した2歳男性は、「(今は)最先端のスキルが欲しい。(なぜなら)自分の夢を実現させたい。いずれは国際機関で仕事をしたい」と言う。
はたまた、食品会社に就職した28歳男性は、「本当は仕事なんかせず、40歳で仕事を辞め、趣味や家族の時間を持ちたい。そのために今は、ベンチャー企業に転職してハードワークしつつ、投資を学びたい」と言う。
ここで、これらのコメントを「前半部」→「後半部」という構成に分けて分析してみよう。そうすると以下のようになる。
・「2年半は自分探し」→(だから)「何でもやる」
・「最先端のスキルが欲しい」→(なぜなら)「夢を実現させたい」
・「本当は仕事したくない。趣味に生きたい」→(そのために)「今はハードワークする」
おわかりだろうか。
前半部のコメント(考え)は、今の多くの若者たちと大差ない。というか、今の若者たちこそ、「自分探し」「スキルが欲しい」「趣味が大事」と言っているではないか。昔と今の若者たちの明確な違いは、後半部(への接続)にある。
「自分を探すために何でもやる」「スキルを得て夢を実現させる」「将来の趣味ライフのために今はハードワーク」……かつての若者たちは、こうして自分たちの仕事に対する熱意を表現し、実際に行動していたのだ。
しかし、今の若者たちの多くはこの「後半部」がないのだ。その部分がすっぽり消滅している。その状態に多くの先輩たちが戸惑っているのが、現在の日本だ。

