動き出したもうひとつのMAGA
トランプ氏に失望した支持者であっても、「アメリカを再び偉大に」のコンセプト自体には賛同する向きは多い。
米政治専門メディア・ヒル紙のエミリー・ブルックス記者は、トランプ氏を熱心にサポートしてきた支持層の一部が、今や「失望と裏切られたと感じている層が明らかに存在する」と言及。
トランプ政権を見放したがアメリカの利益は追求したいこうした層を、彼女は「シャドウMAGA」と呼ぶ。表立ってトランプ氏に反旗を翻す組織ではないが、失望と不満で緩やかに非公式に連帯し、運動の方向性に影響を及ぼしつつある勢力だ。
真っ先に反旗を翻したのは、まさに政権の中心的人物だった。国家テロ対策センター所長ジョー・ケント氏が3月、イラン開戦に抗議して職を辞したのだ。米ニュース専門チャンネルのCNNが報じた辞任書簡で同氏は、イスラエルがアメリカを「利益なき戦争」へ引きずり込んだと糾弾している。
NPRは、議会やメディアからも声が上がったと報じる。元共和党下院議員マージョリー・テイラー・グリーン氏や、元ニュースキャスターのカールソン氏もメディアで、相次いでイランへの攻撃に疑問を呈している。アメリカの国益重視なら、なぜイスラエルの戦争に国費をつぎ込むのかとの問いを突きつけた。
これまでのトランプ氏であれば、党内で一定の反乱が起きたとしても、彼らは「RINO(名ばかり共和党員)」であると一蹴できた。だが「シャドウMAGA」の造反者たちは、トランプ氏自身が掲げた「アメリカ・ファースト」に、トランプ氏自身の政策が沿っていないとの鋭い疑問を投げかける。MAGA運動の正統な継承者を自任し、理念を裏切ったのは大統領の方だと現実を突きつけているのだ。
共和党支持者が選んだ「次の大統領」
保守派の政治集会CPACの模擬投票では、すでに「トランプ後」を見据えた動向が見え始めた。
NPRによると、3月末の模擬投票で、2028年の共和党大統領候補としてヴァンス副大統領が53%で首位に立ち、マルコ・ルビオ国務長官が35%で続いた。首位は2年連続で、保守派の目は明らかにもう「次」に向いている。
今年のCPACに、当のトランプ大統領は姿を見せなかった。CPAC議長のマット・シュラップ氏は、「この連合が結束を保てている理由の一つは、人々がトランプとトランプイズムを受け入れたからだ」と述べた。だが主役のいない壇上でそう力説すればするほど、「トランプなきMAGA」に果たして求心力は残るのかと、かえって疑いたくなる。
早ければ2026年秋の中間選挙で、共和党はこの内紛のツケを払わされかねない。PBSの番組に出演した保守系雑誌『アメリカン・コンサバティブ』編集長でトランプ支持者でもあるカート・ミルズ氏は、イラン紛争が長引けば共和党は上下両院で議席を失うと予測した。大統領予備選でもイラン問題が最重要争点に浮上するとみている。

