すかいらーくHDは株主向け資料で、「高価格or低価格」「カジュアルorファミリー」といった座標軸によって、各ブランドを評価する社内資料(ポートフォリオ)を作成している。
もっとも顧客が多い「低価格・ファミリーダイニング」は、いわば日常食を担う「ファミレス向けゾーン」であり、他社ならサイゼリヤ・ジョイフルあたりが同ポジションに該当するだろう。しかし、近年の急激な値上げにより、このゾーンを占めていたガスト・バーミヤンは、図表の左上(高価格帯)に去らざるを得なかった。
「外食は1人1000円以内」の客層を呼び戻す
このままでは、外食で1000円以上を払わない人々=従来の顧客が、すかいらーくHDから離れてしまう。そこで「資さん」を取り込み「低価格・ファミリーダイニング」の穴を埋めてもらおう、という戦略をとったのだ。実際に、2024年の「資さん」傘下入り後に出店した約30店のほとんどが、ガストからの転換であり、もともとの低価格層の顧客をふたたび呼び戻しつつ、順調に繁盛している。
なお、すかいらーくHDが2026年3月に110億円で買収を発表した「しんぱち食堂」も、ポートフォリオの中で空いている存在であった「カジュアル・低価格」に当たる存在だ。両社ともM&Aの相場よりかなり高価格で買収を受けており、今後ともポートフォリオの穴を埋める企業を探してM&Aを進めるだろう。
まとめると、「資さん」は「和風ファミレス」として「マネされない業態」「マネしても同様の利益が獲れず、割に合わない業態」であったからこそ、すかいらーくHDにも必要とされた。買収からたった2年でさしたるライバルもなく、スムーズに全国展開できた理由が、おわかりいただけただろうか?
“よそ者”前社長の「変えない改革」が奏功
この3項目に加えて、もうひとつ付け加えなくてはいけない。8年間にわたって社長を務め、2026年3月末を以って退任した佐藤崇史・前社長が行った経営改革は「変えない改革」といえる、ものであった。
プロ経営者として珍しい「伝統を活かす」経営の舵取りによって、佐藤前社長はなぜ「資さん」を急成長させることができたのか?
まず、会社の過去をさかのぼってみよう。先に触れた創業者・大西章資さん氏が2013年に退任、2025年に死去して以降、「資さん」の経営は創業家から地元地銀系のファンドに移行。後継者不在による経営危機が、地元誌でも頻繁に報じられた。ここで、過去にスシローなどの買収・再生を手がけた実績があるファンド「ユニゾン・キャピタル」が「資さん」の株式を取得、2018年に経営者として送り込まれてきたのが、佐藤前社長だ。



