生命保険営業マン時代に犯した失敗

入社1年目で顧客獲得のアプローチ方法もまだ身についていなかった私は、最初は親しい友人のところを訪問して、加入のお願いをしていました。しかし友人を回りつくすと、もう行き先が見つかりません。

所長からは「行き先は無限大だ! タバコは自動販売機で買うな。タバコ屋で買え。何度も通って親しくなってタバコ屋も見込み客にするんだ!」と指導されました。人見知りの私には、かなりハードルの高いことでした。

なかなか成果を出せない私は、何とか活動だけはアピールしたいと考え、大量の生命保険のチラシに名刺をクリップして、アタッシュケースに詰め込み、飛び込み営業することにしました。ただ、日中はほとんど不在の家庭が多く、ピンポンを鳴らして誰も出てこないと正直少しホッとして、チラシと名刺を郵便ポストに入れて帰ることを繰り返しました。

名刺を出すビジネスマン
写真=iStock.com/tomocam
※写真はイメージです

その日の夕方に営業所に戻ると、すぐに所長との面談です。

所長:「今日はどうだった?」
私:「はい、30件訪問しました!」
所長:「すごいじゃないか! それで契約はもらえたのか?」
私:「いえ、もらえませんでした」
所長:「そうか……。それでお客様とは、どんなやりとりをしたんだ?」
私:「 お客様とは会えませんでした。たくさん訪問したのですが、不在だったのでチラシと名刺をポストに入れてきました」

所長の顔が曇りました。

営業チラシを配る「真の目的」とは

しばらく沈黙の後、所長が険しい顔でこう言いました。

所長:「 お前は自宅の郵便ポストに銀行や不動産などのチラシが入っていたらどうする? 喜んでじっくり読んだりするか?」
私:「いえ……、たぶん読まずに捨てると思います……」
所長:「 普通そうだよな。顧客にとって関心がないチラシはそのままゴミ箱行きだ。つまりお前は、人様のポストにゴミを配っていることになるよな。そもそもお前がチラシを配った目的は何だ?」

そう問われて、ようやく気づきました。私は営業活動をするためではなく、所長に叱られないためにチラシを配っていたのです。私は所長に謝りました。すると、

「わかったのならもういい。営業成績は良い商品をつくり、お客様のニーズに合った適切な販売活動をした結果、お客様にどれだけ喜んで選んでもらったのかを測るモノサシだ。お客様に喜ばれない営業活動は何の意味もない。仕事の目的を取り違えてはいけない」

それ以来、私は心を入れ替えました。苦手ながらも逃げずにお客様に会う回数を増やして、保険の良さをていねいに説明して回ることにしました。相変わらず「契約してほしい」とは言えませんでしたが、熱心に説明しているうちに保険に入ってもよい、と言ってくれる方が徐々に増えていきました。

所長との対話を通じて、改めて仕事をするうえで常に目的や本質を考える大切さを体感させられた出来事でした。