「フランチャイズはやらない」と断言していたが…
「こんなにも行列ができてるんだから、フランチャイズ化しませんか」
ある日、行列に並んでいた一人の常連客が小野田さんに声をかけてきた。カルロス・バルバディージョ。父親の代からフランチャイズ業界に携わり、マドリードで様々なチェーン展開を手がけるエージェントだった。
「せっかくですが」と小野田さんは即座に断った。
「フランチャイズにすると質が落ちるのは分かっていたので」
実際、店舗を増やした際、スペイン人スタッフへの指示が徹底されず、客に「味が落ちた」と言われた苦い経験があった。
しかもスペインには日本のような製麺所も、スープ業者もチャーシュー業者もない。すべてを自分で作るしかない状況で、フランチャイズなどできるはずがないと思っていた。しかしバルバディージョは諦めなかった。「話だけでも」と食い下がり続けた。
話を聞いて見えたのは、直営展開の限界だった。自己資金では年に1~2店舗が精一杯。しかもスペインでは従業員は全員正社員が基本で、病欠や長期休暇の取得も手厚く守られている。
「頭が痛いという理由で2週間休む人もいます。直営店を増やせば、その管理を全部自分で抱え込むことになる。資金力もなかったし、それだったらフランチャイズで伸ばしていけたらいいなと思ったんです」
「いい仕組みを作ればいいんじゃないか」
2019年、舵を切った。
しかし、壁はすぐに来た。スペインの法律上、自分の店舗で作ったものを他の事業者には卸せない。フランチャイズ展開には、食品衛生基準を満たした自社工場が不可欠だった。マドリード郊外ビジャベルデに自社工場を開設し、スープ、麺、チャーシュー、ソースのすべてを自社製造に切り替えた。
「当初は濃縮スープを送って現場で薄める方式を試したのですが、スタッフによって測る量がばらつき、味が安定しませんでした。だったら測らなくていい仕組みを作ればいいんじゃないか」
最初から完成品を送り、店舗では温めて盛り付けるだけにした。原価は上がる。それでも小野田さんは味の安定を手に入れた。同年9月、フランチャイズ第1号店の契約を締結。マドリード郊外で工事が始まった矢先、コロナが襲った。


