“モノ屋敷”で最期を迎えた女性

50代の女性で、捨てられない「モノ屋敷」に住んでいた方もいました。とにかく物が多く、あらゆる物が目の高さまで積みあがっていて、風呂場も物だらけ、狭い廊下も体を横にして通るのがやっと。彼女は2DKのアパートの奥のリビングにいるのだけれど、自分が動く最小限のスペースしか残されていない。ただ、ホコリはすごかったけれど、たくさんの物は一応崩れないように積みあがっているんです。

彼女はやがて下半身麻痺になり、リビングから動けなくなったので、入院するって言うかなと思ったら、「入院したくない」と言う。ならばベッドを入れなきゃいけないけれど、モノ屋敷でどうする? と……。結局、「もうしょうがない、やるしかない!」と訪問看護師とヘルパーさんたちと決意して、みんなで長靴を履いて部屋に入り、まずは道を作って(笑)、ゴミを出し、2日間かけて部屋をキレイにして、ベッドを入れた。彼女は入院したいとは一度も言わずに、そこで亡くなりました。

65歳以上の一人暮らしの者の動向
65歳以上の一人暮らしの者の動向(出典=「令和6年版高齢社会白書」)

地元で看取り医を見つける方法

こうして、自宅で最期を迎えたくても、環境的になかなかできない場合もありますが、私のような在宅緩和ケア医は、どこの地域でも捜せば見つかるはずです。僕の診療所にも、週に1人か2人、群馬県外からの方がみえて、そのうちの何分の1かは「ここに通いたい」と言うけれど、「地元で見つけましょうよ」と言って全部お断りしています。「体力がなくなってからでは探せないから、今ここに来られる元気があるうちに、あなたの生き方を支援してくれる医師を探しましょう」と言って、地元での見つけ方を30分かけて教えています。

萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)
萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)

見つけ方を大まかに言うと、まず「緩和ケア」を掲げている病院や医院を探して電話をしてみる。大抵は、元気なうちは診てくれません。でも時々、元気な間から通院で診てくれ、「治療したくないなら、あなたの好きなやり方でいいですよ」と言ってくれる医者がいるので、そういう医師を丹念に探しましょう。もう1つは、訪問診療のリストが地域にあるので、自宅から近い順に電話をして、あなたの生き方を支援してくれる、あなたに合った在宅緩和ケア医を探すしかないです。

断られてもめげずに、少なくとも"十中八九"は断られるつもりで探してください。群馬県内にも、そういう医者が僕の周辺だけで5、6人いるので、たとえば東京なら100人以上いるんじゃないでしょうか。県外から来た方に探し方を教えたら、「見つかったらハガキちょうだいね」と言って帰します。そうすると、見つかるとハガキが送られてきたり、まんじゅうが送られてきたりするので(笑)、きっと見つかるのではないかなと思います。

群馬県前橋市の萬田診療所
撮影=プレジデントオンライン編集部
群馬県前橋市の萬田診療所、2026年2月
(取材・構成=浜野雪江)
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