「死にたくない」と思うのは…

納得がいく最期を迎えるにはどうすればよいのか。

がんが治っても、がんがなくならなくても、がんにならなくたって、人はいずれ老いて、弱って死にます。けれど、「人はいつかは死ぬ」ということをちゃんとわかって、自分や家族の死について考えられる人は少ないのです。ほとんどの人が、「死んじゃうのはしょうがない」とは思えないんですよね。死ぬことを考えたくないから、とにかく死なないようにする方法を求めて、死を先送りしてしまう。死にたくない人は誰も救えない。いずれにしても最後は死んじゃうのですから、本当はそこから逆算して考えるといいのですが……。

僕の診療所に来るのは、本人がやがてくる死を認め、がん治療をやめて、自然に枯れるように亡くなることを選んだ患者さんと、その家族です。それは終末期の患者さん全体からみるとレアなケース。さらに、がん治療を希望しない本人の意思を家族が認めてくれるのは、僕の推測では5%くらいの人たちです。

本人が枯れるように死ぬのを願っても、家族が同意してくれるケースはとても少ないからです。子どもはとにかく親に生きていてほしいもの。患者本人にとって延命治療は「余分な治療」でも、子どもにとっては「必要な治療」で、延命をしているつもりはないんです。

でも、子どもの望みを優先する代わりに、自分の好きなように生きられないのはつらいですよね。苦しい思いをして治療を続けて亡くなっていくほとんどの人がそうだと思います。だから、自分主体で生きられる独居の人のほうが、延命治療なしにスッと逝くことができるのです。

独居老人の方が自由に死ねる?

独居の人が在宅緩和ケアを受けるケースはまだまだ少ない。実際のところ、入院している独居の人はみんな家に帰りたいんだけれど、まず病院側が「無理です。一人暮らしだから家には帰せません」と言って、施設に入れたり、転院させたりします。しかし、在宅緩和ケアの専門家、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーらと連携して体制を整えた上で、本人が自分の病気をきちんと受け止めていれば、一人で最期を迎えることは、それほど難しいものではありません。

患者さん自身も、むしろ一人のほうが楽なことが多いです。なぜなら、心配のあまり「あれダメ、これもダメ」と、口をはさむ家族がいないからです。「これは病気によくないから」と食事を制限され、お酒やたばこなどの嗜好品も禁止、外出もままならないようでは、がまん続きで心の状態がどんどん低下してしまいますので。もちろん家族がいれば安心だし幸せでしょう。でも、足を引っ張る面もあるのです。

65歳以上の者がいる世帯構成、世帯の割合
65歳以上の者がいる世帯構成、世帯の割合(出典=「令和6年版高齢社会白書」)