親の介護と自分たちの老後を同時に整える
複数の論点が重なっていたため、このケースでは主に次の3つを順に整理していきました。
①介護費用の「見える化」と姉弟の話し合い
まず、お母様の介護費用について「在宅継続」「軽費な施設」「手厚い施設」の3つのシナリオで総額を試算しました。その上で、不足分は敏夫さんが一時的に立て替えるものの、将来の遺産分割時にそのぶんを「寄与分」として清算することを、お姉様と事前に話し合うよう提案しました。
お姉様も遠方で介護に十分関われないことを気にされていたこともあり、この整理は前向きに受け止められました。介護費用の負担をどう整理するかの見通しが立ったことで、金銭面の不安はかなり和らぎました。
②老後資金の色分け
次に、自分たちの老後資金について、資産を「使う(生活費補填)」「守る(予備費)」「育てる(成長)」の3つに色分けしました。
資産があっても「どこまで使っていいのか」が見えないと、年金生活に入って、不安から必要以上に使えなくなったり、逆に根拠なく取り崩してしまったりしやすくなります。そこで、日々の生活費を補うために使う資産、急な支出や介護などに備えて守る資産、すぐには使わず将来に向けて育てる資産を分けて整理しました。
特に「育てる」部分では、リスクを抑えたバランス型ファンドでの運用を継続しながら、年間4%程度を目安に取り崩すルールを設定しました。こうして、老後資金を「ただ持っている資産」ではなく、「いつ・何のために・どのように使うかがわかる資産」として整理していきました。
③一時払い終身保険を活用した相続税対策と納税資金の確保
その上で、老後資金全体を整理した結果、すぐに使う予定のない資産の一部については、一時払い終身保険を活用する形に見直しました。
生命保険には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、現預金のまま保有するよりも、相続税の圧縮につながる可能性があります。さらに、保険金として受取人に渡ることで、納税資金として使いやすい形をあらかじめ準備できる点にもメリットがあります。
また、老後に使うお金と、将来家族に残すお金を分けて整理しやすくなるため、資産全体の見通しも立てやすくなります。一方で、途中で自由に動かしにくい面もあるため、生活費や予備費まで保険に振り分けるのではなく、当面使わない資産に限って活用する前提で整理しました。

