「とりあえず年収は上がりますから」

十数年前、当時勤めていた会社で営業をしていたときのことです。日本のトップエリートとされる企業の中堅管理職に対して、挑戦的な提案をさせていただいた際にこんなふうに言われたことがありました。

林 宏昌『上司はリスクばかりを指摘する 会社を潰す「大課長」問題』(朝日新聞出版)
林 宏昌『上司はリスクばかりを指摘する 会社を潰す「大課長」問題』(朝日新聞出版)

「会社が成長してもしなくても、とりあえず私たちの年収は上がっていきます。だからうちの事業のことは、そんなに気にしないでください」

私は衝撃を受けました。課題に対して解決策を精一杯考え、優先順位を決めて挑戦するのが当たり前だと思っていた、自分との仕事観の違いに何も言えませんでした。生き方としてはこうした姿勢もありかもしれませんが、経営の視点から見ると、変化や挑戦が検討・推奨されずに固定化してしまいます。課長以下一般社員はそんな先輩の背中を見て、「新規事業をやると言っていたけど、やらないんだな」「人的リソースを増やしてくれる気はないんだな」など、よくない実体験ばかり積んでいきます。新しい企画や改善策を提案しても「大課長」によって却下されたり、うやむやにされたりすると、その社員は「頑張っても、何も変わらない」と、もともと持っていたやる気を失ってしまいます。そしてその無気力ムードは、じわじわと部署内に蔓延していきます。