「イヌ」と教えるより「ワンワン」

あるとき親御さんから、「『ワンワン』よりも、最初から『イヌ』と教えたほうがいいのでは?」と聞かれたことがあります。実は「ワンワン」のような「オノマトペ」を使うことには、大きなメリットがあるのです。

オノマトペには、身のまわりの音や声を表す擬音語(例:ざあざあ・ワンワン・ブーブーなど)、動きや様子を表す擬態語(例:ガーン・きらきら・ニコニコなど)の2種類があります。欧米諸国ではオノマトペは擬音語が多いのですが、日本語には多くの擬態語のオノマトペがあります。日本語はオノマトペが非常に豊かな言語なのです。

子どもとの関わりでオノマトペを使うことには、いくつもの利点があります。まず、オノマトペを使うと「ことばの意味」が伝わりやすいといわれます。実際、ことばの相談に来る子どもの中には、何枚かのカードを見せて「くるま、どれ?」と聞いても選べないが、「ブーブー、どれ?」と言うと、「これ!」と選べる子がたくさんいます。

【図版】オノマトペを使う
出典=『子どものことばが育つコツ120』(サンマーク出版)

これは、ことばを覚え始めの子どもには、「くるま」ということばで車をイメージすることは難しいが、「ブーブー」ならば車をイメージできる、ということを意味します。

ことばをサポートする際の鉄則は、「わかる表現」を使って関わることです。特に2~3歳では、積極的にオノマトペを使い、わかりやすいことばで話してください。

「まねる」をくり返して、ことばを獲得

オノマトペは、「模倣がしやすいこと」も大きな利点です。「にゃーにゃー」「トントン」「モグモグ」など、同じ音をくり返す、簡単でまねしやすいことばがオノマトペには多いのです。

子どもは、周りの人のことばを「まねる」ことをくり返して、ことばを獲得します。

はじめは簡単な音から、徐々に発音の難しい音や語をまねできるようになります。

ことばをまねすることが少ない子どもでも、まねしやすい「オノマトペ」であればまねができ、ことばをまねる喜びが経験できます。また、オノマトペの音のくり返しやリズムは子どもを惹きつけ、「ことばの記憶」や「発話」をうながすともいわれます。

【図版】オノマトペを付け足す
出典=『子どものことばが育つコツ120』(サンマーク出版)

子どもが最初に覚えることばには、「ワンワン(イヌ)」「にゃーにゃー(ネコ)」「あむあむ(食べる)」「うーうー(消防車)」「かーかー(カラス)」「かんかん(踏切)」「びりびり(破く)」などオノマトペがたくさんありますが、オノマトペの音のくり返し、リズムは、ことばに興味を持ち始めた子どもにとってとても魅力的なのでしょう。

「おさるさん、食べてるね」と、子どもの「言いたいこと」を正しく言語化することは、決して間違いではありませんが、そこでもう一歩進めて、「モグモグ」という、くり返しやリズムが楽しいオノマトペを、ぜひ聞かせてみてください。