幼いわが子に言葉を教えるために親は生活の中でどのように教えればいいのか。子ども専門の言語聴覚士として30年のキャリアを持つ原哲也さんは「例えば、子供が親の手伝いをしたいと言った時は、いっしょにやることでさまざまな能力が身に付く」という――。(後編/全2回)

※本稿は、原哲也『子どものことばが育つコツ120』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

「ママがやってるのを、よーく見てね」

ことばの獲得には、大人が発することばが何を意味するのかを、視線や表情、状況などを手がかりにして読みとる能力が大切です。その土台をつくるのが「模倣」です。

「動作模倣(動きをまねすること)」と「ことばの獲得」には強い関連があります。

こんな実験があります。35人の自閉症スペクトラム障害の2歳児を追跡調査したところ、運動模倣(全身運動のまね)の力がある子どもは、4歳になったときの「言語能力」が高かったといいます。

「動作模倣」の経験は、ことばの獲得にとって大事なのです。ですから子どもに、大人の動きをどんどんまねしてもらいましょう。

この点、「お手伝い」は、子どもに「動作模倣」の経験を積ませるよいチャンスです。

お手伝いをしてもらうと時間がかかるし、ゴミを散らかしたり、周りのものを倒したり、かえって面倒かもしれません。「触らないで!」「やらなくていいよ」「じゃましないで」などと言いたくなるのもわかります。

しかし、ここは動作模倣の絶好の機会だと思って、「ママがやってるのを、よーく見てね」と玄関掃きに注目させ、やり方をじっくり観察してもらいましょう。

つたないながらもお手伝いをしてくれたら、「ありがとう」と言うといいですね。

子どもが「行きたい&やりたい」時がチャンス

「あれ買って〜」「もう歩くのイヤ〜」……子どもと一緒の買い物、大変ですよね。

さっと買い物をすませたいのはわかります。しかし何であれ、子どもが「行きたい!」「やりたい!」と言うときは、ことばを覚える絶好の機会です。

買い物で「必要なもの」を一緒に確認して書きだすと、「しょうゆ」「ティッシュ」「シャンプー」などの生活必需品に関することばを覚えられます。

スーパーに行けば、長野県産トウモロコシや、山形県産だだちゃ豆が並び、精肉コーナーではカナダ産豚ロース肉が売られ、「熱帯フルーツフェア」のスターフルーツの五角形の断面に、子どもの目は釘づけになるでしょう。

県名、国名、肉の部位、気候、形……。能動性が全開状態の子どもは、そこで出会う、興味のあるものに関することばをぐんぐん吸収します。ぜひ、目にするさまざまなものについて話してあげてください。

ただ、いろいろ話しかけて、子どもがうるさがるなら逆効果です。あくまでも、「子どもが興味のあること」を話すことが大事です。

買い物に限りません。「○○したい!」と言ったときこそ、チャンスなのです。「能動的であるとき、ことばを覚える」ことを、頭の隅に置いていただければと思います。

【図版】能動的になれる場面をつくる
出典=『子どものことばが育つコツ120』(サンマーク出版)