ようやく腹一杯食べられるようになった
習近平の言葉を引用してみよう。「2022年新年の挨拶」の一節である。
私も農村出身だから、貧困を肌で感じていた。代々続く努力の結果、以前は貧しかった人々も現在は腹一杯食べ、暖かい服を着て、充実した教育・住居・医療保障を手にした。小康社会の全面的達成と貧困脱却はわが党が人民に示す成果であり、世界への貢献でもある。
もちろん、中国でも経済格差は拡大しており、それは都市と農村、地域間、企業間、学歴間などで顕著である。そこで、中国政府は、「共同富裕」を掲げて、格差の是正を図ろうとしているが、十分な成果を上げているとは言えない。
もちろん、経済的に豊かになっても、治安が悪く、いつ暴動が起こるかわからないような状況では、国民は平穏な生活を送れない。そこで、中国政府は、不満分子が抗議活動などを起こさないように、徹底した監視と強権的な取り締まりを実行している。
ディストピアでも「幸福」な理由
今ではスマホが全国民に行き渡り、皮肉なことにそれを武器にして共産党は国民を完全に監視することに成功している。そのおかげで、犯罪や交通違反などが激減し、政権批判を生業としないかぎり、普通の中国人にとっては、『幸福な監視国家・中国』(梶谷懐・高口康太、NHK出版新書、2019年)で描かれるような「幸福な監視国家」を甘受している。
それはジョージ・オーウェルが『1984年』で描いたディストピアでもあるが、国民が不満を募らせているわけではない。
先端技術による国民監視が功を奏したのは、新型コロナウイルス対応である。徹底した「検査と隔離」によって、ウイルスの封じ込めに成功した。武漢では初動で後れを取り、感染の拡大を招いたが、その後は感染者が出た町を全面封鎖するなど、強権的手法で感染の抑制に成功した。
パンデミックの場合、感染防止のために基本的人権を抑制せねばならないのは先進民主主義国においても同じだが、独裁の中国ではその手法が徹底している。

