「オーガニックを食べる人=健康」の意味
オーガニックを多く食べている人たちはより健康的で疾病リスクが低い、という疫学研究の結果は多数あります。オーガニックは慣行農産物に比べ高価であり、食べる人たちは高収入で健康に配慮し、栄養や食事の量も管理し運動をよくするケースが多く、そうした因子を取り除いて純粋にオーガニックの農産物のほうがより安全、健康的と言えるような根拠はない、というのが、研究者の大勢の意見です。
また、オーガニックだからおいしい、という根拠もありません。食品のおいしさは、栽培方法のほか、品種や栽培時期、鮮度、調理の方法、食べる側の健康状態など多数の要素により変わります。オーガニックは主に栽培のルールなので、ほかの要素によっておいしくなったりまずくなったり、です。
反対署名活動を始めた母親の訴え
紹介した品川区の内部文書は、区立中学に長男を通わせている女性が、情報公開請求により開示を受けたもの。女性は、「安全性向上やおいしさの根拠がないのに導入し、その結果、給食の調理現場の負担が増している。完全にデメリットが上回っていると言わざるを得ない状況にも関わらず、区長から何の説明もないのはおかしい」と語ります。
女性は、昨年2月の区長発表直後から、「有機農産物にとらわれない給食を求めます!」とインターネットで署名活動し、1000人あまりの署名を集めて提出しました。
オーガニックの農産物は、慣行農産物より高価です。品川区は2025年度、オーガニックによる上乗せ分として2827万円を計上しました。4月からの2026年度も継続する、と校長連絡会等では示されていますが、2026年度の予算案に事業費としては計上されていません。
区の関係者は、情報開示請求をした女性に対して「民間企業の寄付を、オーガニック導入による負担増に充てる」と説明しました。この点についても区に質問しましたが、回答はありませんでした。
情報開示請求をした女性は「食材費は寄付で賄うと言っても、栄養士、調理員、区教育委員会学務課の負担増は区民にとって大きな損失になる。オーガニックで増加する費用を、季節ごとの状態の良い食材の購入に充てたほうが、より『おいしい給食』につながるのではないか」と話します。
オーガニックは、循環系の構築や生物多様性の保全に一定の貢献をすることは、多数の研究によりわかっています。学校給食に導入し、子どもたちに環境への効果を伝えている自治体もあります。
品川区も、慣れてゆけば作業負担は減るでしょう。しかし、「より安全」「健康増進」「おいしい」は科学的根拠がなくウソです。学校給食は本来、教育委員会と教育長の判断が重要なのに、区長のパフォーマンスが先行し、ウソから始まった品川区のオーガニック給食。品川区は今後、どうするつもりなのでしょうか。
※記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます。
参考文献
Poulia KA et al. Impact of organic foods on chronic diseases and health perception: a systematic review of the evidence. Eur J Clin Nutr. 2025 Mar;79(2):90-103.
Komati N et al. Potential Health Benefits of a Diet Rich in Organic Fruit and Vegetables versus a Diet Based on Conventional Produce: A Systematic Review. Nutr Rev. 2025 Mar 1;83(3):e1101-e1114.
Mayo Clinic・Organic foods: Are they safer? More nutritious?
プレジデントオンライン〈「国産小麦、オーガニック、天然酵母」は要注意…人気の高級ベーカリーにひそむカビ毒のリスク〉

