どうすれば自分に向いている仕事を探せるのか。心理学者の榎本博明さんは「その考え方こそがキャリアの成長を妨げている可能性がある」という――。(第2回)

※本稿は、榎本博明『すぐに「できません」と言う人たち』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

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「好きな仕事探し」の落とし穴

「好きなこと探し」にとらわれていると、大事なことを見逃してしまいがちである。そこで考えるべきは、仕事の楽しさ・おもしろさとはどのようなことを指すのか、ということである。学生時代を思い出して、アルバイトでも部活でも、どんなときに「楽しい」「おもしろい」と思ったかを振り返ってみればいい。

多くの人があげるのが、できないことができるようになったときだ。はじめから楽しいというようなことはあまりなく、できないことができるようになることで楽しいと思えるようになり、それをすることが好きになる。

「楽しい」と思い、「好きだ」と思えるようになる前に、たいていは苦しい時期がある。それを頑張って乗り越えることで、克服する喜びを感じることができ、成長の実感も得られ、それが「楽しさ」につながっていく。

このような「楽しさ」の意味を考えると、「好きな仕事を見つけたい」「思ってたのと違って仕事がおもしろくない」「もっと楽しく働ける仕事に変わりたい」という場合の、「好きな仕事」「仕事のおもしろさ」「楽しく働ける仕事」の内容を考え直す必要があるだろう。

学生たちの悩みを聞いていると、「楽しい」とか「おもしろい」ということの意味を勘違いしていると言わざるを得ないケースが少なくない。そのあたりの内容を授業で取り上げた後の気づきレポートでは、つぎのような記述が目立った。

楽しいは「内容」ではなく「やり方」次第

「コンビニでバイトをしているが、はじめは淡々とこなすだけで嫌としか思えなかった。しかし、常連の人に『ダメだ』と言われたことで、この人に認めてもらえる店員になろうと思い、レジを素早くさばくようにし、常連の人はだれがレシートを受け取るか、袋の種類へのこだわり、弁当を温めるかどうかといったことを意識するようになった。このように工夫することにより常連の人から声をかけてもらえたり、自分自身充実感が出てきて、仕事もいろいろ任せてもらえるようになり、仕事の楽しさを感じられるようになったのを思い出した」

「アルバイトをしていて『仕事が楽しい』と感じるのは、仕事のやり方が充実しているときで、自分でやり方を工夫して成果が出たときなどに感じることが多い。選んだ仕事が楽しいかつまらないかは自分のやり方次第だと私は思った」

「最初アルバイトを始めた頃は、わからないことだらけで、行くのが毎日嫌だった。しかし、1年くらい続けていると仕事もできるようになり、楽しくなっていた。だれだってできるようになるまで頑張らないと、どんな仕事も楽しくならないと思う」

このように学生たちは、授業で刺激を与えることで、「好きなこと探し」の呪縛から自由になり、さまざまな仕事を楽しめる方法を模索し始めている。