「やりたい」よりも「できる」ことを増やす

キャリア教育においては、「好きな仕事を見つけよう」とか「理想のキャリアをデザインしよう」などと促すよりも、仕事の「おもしろさ」や「楽しさ」とはどういうものかについてじっくり考える機会をもたせることのほうが重要であり、それが就職後の仕事力の発達にもつながっていくのではないか。

やりたいことにこだわりすぎることの弊害について説明してきたが、若い頃に大切なのは「できること」を増やしておくことである。スポーツでも、音楽でも、何でもそうだと思うが、できることの水準が上がれば、やりたいことの水準も上がっていく。仕事も同じだ。「できること」が増えれば、「やりたいこと」も変わってくる。

そこで大切なのは、「好きなこと探し」に没頭することではなく、目の前のことに没頭することである。「これは自分がほんとうにやりたいことなのだろうか」などと、「好きなこと探し」ばかりしていると、目の前の勉強や仕事が疎かになりがちである。好きなことは何かなどと考えるよりも、まずは動いてみることである。

目の前のことに没頭することで、「できること」が増えていく。「できること」が増えていくこと、それは成長の実感につながる。気になることは何でも調べてみる。あるいは何でもやってみる。頼まれた仕事は、特別な事情がないかぎり、どんな仕事でもやってみる。

オフィスビル内の机に座って事務処理をしている男性ビジネスマン
写真=iStock.com/Liubomyr Vorona
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「まず動く人」が成長する理由

余分な仕事も可能な範囲内で引き受けてみる。定型的な仕事をする際も、いつもと違うやり方を工夫してみる。気になる資格があれば、取得を目指して勉強してみる。

ちょっとでも気になる本があれば、とりあえず読んでみる。そうした積極的な行動が、「できること」を増やすことにつながっていき、新たに「やりたいこと」が出てきたりする。その「やりたいこと」を意識して勉強したり仕事のやり方を工夫したりしているうちに「できること」が増えてくる。

そうすると「やりたいこと」も変わってくる。そのような好循環こそが仕事力の向上にとって大事なことであり、今この時点での「やりたいこと」にとらわれすぎると身動きが取れなくなり、仕事力の成長が滞ってしまう。

「やりたい仕事は何か?」「好きな仕事は何か?」といくら考えても、実際にやってみないことには、なかなかわからないものである。やってみて初めて実感が得られる。

「これ、得意かも」「意外に面白い」といった実感も、「ちょっと無理」「何だか物足りない」といった実感も、実際にやってみることではじめて得られるものだ。自分に合う仕事も、合わない仕事も、やってみて初めて実感することができる。