向いているかどうかを考えるのは時間の無駄

自分の適性も、仕事に求められる適性も、やってみて初めてわかるということが多い。自分に合っているだろうと思っていた仕事も、実際にやってみると、予想していたのと違って、どうも合わないということになることもある。反対に、自分には合わないだろうと思っていた仕事も、試しにやってみると、案外合っていたというようなことも、けっして珍しくはない。

キャリア教育的情報で、どの仕事にはどんな適性が必要かなどと知らされても、実際にやってみないと、それぞれの仕事に求められる適性など実感としてわからないし、そもそも情報として知った必要な適性を自分がもっているかどうかも実感としてわからない。

ある仕事に自分が向いているかどうかは、いくら考えてもよくわからないものである。考えてもわからないときは、とりあえず考えるのをやめて、勢いに任せてやってみることだ。そうすることで適性が引き出されてくる。適性を固定的にとらえると、かえってキャリアの幅を狭めてしまう。適性というのは、素質と経験の相互作用のもとにつくられるものである。

すでに決まっているものではなく、これからつくられていくといった面もあるのだ。自分の適性を狭くとらえることで、職業選択の間口を狭めてしまい、自分に合った仕事に就く機会を逃してしまうこともある。

スキル開発のコンセプト
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自分の適性は挑戦の先に見えてくる

ちょっと古いデータではあるが、約50社の社員を対象に行われた調査の結果をみると、20代や30代ばかりでなく40代や50代以上でも、キャリアに関する悩みや迷いの筆頭に上がるのは、「適性」と「能力」で、この2つが群を抜いている。

ともに5割を超えており、長く仕事を経験していても、半数以上の人たちは自分の適性や能力がはっきりつかめず、悩んだり迷ったりしているのである(『労政時報』第3489号 2001年4月27日)。

自分がどんな仕事に適性があるのか。自分にはいったいどんな能力があるのか。何十年も仕事をしている40代や50代の人たちにもよくわからないのだ。そんなわかりにくいものにとらわれていたら、決断が遅れ、いろいろなチャンスを逃すばかりだろう。

経験の積み重ねが適性をつくっていく。適性というのは、考えて得られるものではなく、仕事に真剣に取り組む経験の中でつくられていくものなのである。自分のやっている仕事に没頭することで、その仕事に必要な能力が徐々に開発されていくのである。

必死にならないといけない状況に追い込まれると、総力を結集してがむしゃらに動くしかない。そんなときに、これまでにない力を発揮することがある。潜在的な能力が引き出されたのだ。